40歳でプロサッカー選手に転身した男の肉体改造の秘密

2018.9.5

livest!編集部

人生を楽しむ「新しい挑戦を始める」

40歳でJリーガーになった男の肉体改造の秘密

vol.1

livest!にもたびたび登場してくれる水戸ホーリーホックの安彦考真選手は、今シーズンからJリーガーの一員となった40歳の〝オールドルーキー〟だ。

10代の頃はブラジルのプロリーグでプレーしていたほど、サッカー選手としての可能性を秘めたプレイヤーだった安彦選手だったが、脚に大ケガを負って以降、トップレベルでプレーすることを諦め、大宮アルディージャの通訳やサッカースクールコーチなどを本職として、20代、30代を過ごしていた。

しかし、39歳となった2017年秋。子どもの頃からの夢であり、10代の頃に手が届きそうで届かなかった「Jリーグでプレーするプロサッカー選手になる」という夢に再挑戦することを決意。仕事もプライベートもすべて捨て去り、Jリーガーになるための肉体改造を始めた。

そんなアラフォーの安彦選手の無謀といえる挑戦の同伴者として、肉体改造の指導を行ったのがプロアスリートたちから絶大な信頼を集める木村匡宏トレーナーだった。

夢を追う40歳と、その挑戦の旅の一員となったスポーツトレーナーの肉体改造の取り組みは、数か月後、周囲の誰もが「絶対無理だ」と決めつけていた「40歳でJリーガーになる」という夢を実現へと導いた。

約20年、本格的に鍛えることなく過ごした肉体を、プロ仕様にまで鍛え上げ、プロ契約を勝ち取るまでに磨き上げた安彦選手と木村トレーナー。誰もが驚いた夢の実現を果たした2人は、約3か月、いったいどんなコミュニケーションをとり、どんなトレーニングを行ってきたのか?

アラサー&アラフォー世代にとって、歳を重ねれば重ねるほど「無理だ」と決めつけてしまう挑戦は増え続けていく。そして、結局、今いる場所にしがみついて時間の経過を受け入れていく……。

そんな現状を打破したいと思っている40代にぜひ知ってほしい、40歳のオールドルーキーの挑戦の軌跡を--。

<vol.2>安彦考真選手と木村匡宏トレーナーの肉体改造の挑戦

アラフォーから理想のボディメイクは可能

2018年、26年目のシーズン真っただ中のプロサッカーリーグ「Jリーグ」。今夏ロシアで開催されたFIFAワールドカップ終了後、これまでにないほどの世界的スーパースターのJリーグへの加入が話題となっている。

スペイン代表や超名門クラブ・FCバルセロナの一員として数多くの栄光を手にしたアンドレス・イニエスタ選手(ヴィッセル神戸に加入)や、フェルナンド・トーレス選手(サガン鳥栖に加入)など世界的レジェンドたちの来日は日本サッカー界を超え、世界的に大きな注目を集めている。

そんな新加入選手が注目を集める今シーズンのJリーグに、もう1人、別の意味で話題となっているレジェンドが加入した。
それが水戸ホーリーホックに加入した安彦考真選手。なんと40歳でのプロサッカー選手となったオールドルーキーだ。

現在、公式戦デビューをめざして水戸ホーリーホックで練習に励むアラフォーの新人選手が、プロを目指し始めたのは昨年秋。「まずはプロアスリート仕様の体に鍛え直す」と指導を仰いだのが、IWA ACADEMYの木村匡宏トレーナーだった。
「若い頃にプロを目指していた時期はありましたが、20代以降ほとんど本格的に体を鍛えてなかった。そんな状態でプロサッカー選手になるための肉体改造をするならこの人を頼るしかいないとお願いしました」
短期間でのプロ仕様の肉体改造の指導を依頼された木村トレーナーは、安彦選手の世間的には無謀でも本人の熱い想いを受けて快諾。そこから木村トレーナーを中心とした特別チームが結成され、プロを目指す安彦選手を全面サポートした。

トップアスリートを多数指導するトレーナーの独自の指導法

木村トレーナーが在籍するIWA ACADEMYは、メジャーリーガーの岩隈久志投手が共同オーナーを務める高級スポーツジム。岩隈投手や安彦選手だけでなく、プロ野球選手やJリーガーなど多くのトップアスリートがこのジムに集い、木村トレーナーの指導を受ける。またトップアスリートだけでなく、次代の日本代表をめざす学生アスリートも指導する木村トレーナー。
「僕のトレーニング指導は、身体の使い方に主眼を置くので、足先から手先までの体のつながりを出していきます。例えば『足の指』。足の指の動きを良くするだけで、すぐにプレーの質が格段に上がる選手も少なくないんですよ」

独特の指導理論で、数多くのトップアスリートのプレーの質を劇的に向上させてきた木村トレーナーが、プロ選手のめざす安彦選手に行ったトレーニング指導の中心は、体幹と股関節へのアプローチだった。その中でも効果的だったトレーニングが、相撲の動きとしてよく知られる『四股』の動きを取り入れたトレーニング。
「股関節は360度動く関節でもあり、すべての動きに重要な役割を担う関節ですが、効果的に鍛えることが難しい部位でもあります。その点、四股の動きは股関節の可動域を広げるのに最適なんです。だから四股はトップアスリートだけでなく、子どもたちにも積極的にやってもらっています」

もし安彦選手がJリーグ公式戦でデビューすれば、Jリーグ史上最年長でのプロデビュー記録を更新する。ゴールを決めればリーグ史上最年長初ゴールとなる。
ちなみに、現在の史上最年長初ゴール記録は、ブラジルの英雄〝神様〟ジーコが、1994年のJリーグ開幕戦で決めたゴールだ。ジーコはそれまでに世界のトップリーグで大活躍をした実績を引っさげて40歳でJリーグに参加した。一方の安彦選手は40歳になるまで一度もプロの世界でプレーしていない。安彦選手の40歳デビューがどれだけ規格外かがわかるだろう。

「本当にプロとして契約を勝ち取れるかわからない段階から、木村トレーナーは真剣に向き合い、本気でトレーニングを指導してくれた。僕が40歳でプロサッカー選手になれたのは数え切れない人のサポートがあったからですが、その中でも木村トレーナーへの感謝の気持ちは大きいです。ぜひジーコを超える記録を打ち立てて、日本中のアラフォー世代に勇気を与える存在になりたいですね」
そう語る安彦選手が、木村トレーナーから指導を受けたトレーニングの中で、特に効果的だと感じたトレーニングメニューを2つ、今回と次回に分けて紹介する。
40代からでも簡単に始められ、一般の人にも効果抜群の簡単エクササイズ。日常生活をより活動的に過ごせる身体作りをめざして、ぜひ木村トレーナー直伝の「アラフォー向けエクササイズ」を試してみてほしい。

安彦考真

(あびこ・たかまさ)水戸ホーリーホック所属
ポジション:FW 背番号:41 1978年2月1日生まれ・神奈川県出身

影山裕之:撮影

 

アラフォー世代向け簡単で効果抜群エクササイズ<四股>

「四股の動きは下半身の大きな筋肉を刺激します。夕方にこのエクササイズを行って体温を上げることで、夜の睡眠時に体温が落ちていく勾配をつくれるので、睡眠導入にも最適のエクササイズです」(木村トレーナー)

 

1)イスなどの台に掴まりながら、左足のつま先とヒザを斜め45°くらいに開く
※ポイント:つま先とヒザを同じ方向に向ける

2)左足に体重を乗せ、上げる高さは気にせず右足を上げられるだけ上げる

「OKの姿勢」
→しっかりとヒザに力が入る状態

「NGの姿勢」
→ヒザが内側に入るとヒザを痛める危険性あり

3)ヒザと太もも裏の筋肉がしっかりと伸び切るように右足の太ももの前側に力を入れる
※ポイント:太もも裏の伸びを十分に感じるくらい伸ばす

4)上体でバランスを取りながら、右足が完全に伸び切ったところで3秒キープ

※ポイント:この状態でバランスを意識することで体幹も鍛えられる

5)足を変えて、逆脚で同様の動きを行う
6)この動作をゆっくり5回ずつ左右交互に行う

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