意外な組み合わせから最上級のエンタテイメントを創造する

2018.10.24

musicalover

人生を楽しむ「教養を広げる」

意外な組み合わせから最上級のエンタテインメントが創造される

 

新感線☆RS「メタルマクベス dics2」

2018/10/22(月)14:00開演

@IHIステージアラウンド東京

 

日本唯一の回転式円形劇場で見るメタル×演劇

10月22日(月)14時開演の劇団☆新感線「メタルマクベス disc2」をIHIステージアラウンド東京で鑑賞。

昨年から今年にかけてロングラン上演された同じ劇団☆新感線の「髑髏城の七人」シリーズ(花・鳥・風・月・極)を鑑賞して以来となる同劇場。

360度回転する円形劇場のステージアラウンド東京は、映像や音響の環境も素晴らしく、また座席も座りやすい劇場だが、最寄り駅がゆりかもめ線の「市場前」駅というイマイチ便が良くない場所にあるのが唯一の難点。

髑髏城シリーズ時は周囲は人気もなく閑散としていたが、今回は築地市場から豊洲市場への移転後だったため、多少活気が出始めていた。(午後だったため、市場周辺にはそれほど人の姿はなかったが、早朝などはおそらく活気があるのだろう)

メタルマクベスは、2006年に劇団☆新感線と宮藤官九郎がシェイクスピア作品に初挑戦した作品。メタルロックバンドが劇中で生演奏するという「音楽に特化した演劇」という新しいスタイルで上演され、人気を博した演目。

今回の新たなメタルマクベスは3つのシリーズで展開され、橋本さとし&濱田めぐみの実力派俳優コンビで上演された「disc1」はすでに終了。尾上松也&大原櫻子コンビでの上演となった「disc2」も千穐楽間近で、引き続き浦井健治&長澤まさみコンビで上演予定の「disc3」の開演が控えている。

ステージアラウンドのこけら落とし公演となった髑髏城シリーズは「花・鳥・風・月・極」とすべて鑑賞したが、今回のメタルマクベスは「disc1」を鑑賞していないため、2018年版メタルマクベスは今回が初鑑賞。

「disc2」の主演の尾上松也の演劇は初めての鑑賞となるが、大原櫻子は最近だけでも「わたしは慎吾」、「リトル・ヴォイス」、「FUN HOME ある家族の悲喜劇」など、主な出演舞台はすべて鑑賞している。それほど彼女の演技や舞台上の歌唱のファンと言ってもいいくらい。

2006年版のメタルマクベスは内野聖陽&松たか子主演で、森山未來、北村有起哉、橋本じゅん、高田聖子といった錚々たる実力派俳優陣が出演していた劇団☆新感線を代表する作品。最近でもWOWOWでよく放送されるなど、高い人気を誇っている。

実際、WOWOWで何度も視聴していたが、正直その時はそこまで面白いと思えず、disc1のチケット発売時はパスしていた。

さらに、このステージアラウンド。個人的には施設の素晴らしさよりも、行き来の面倒さが上回ってしまい、あまり積極的に行きたいと思えない場所だったりする。

また客席数が多いため、同じS席でも見やすさ見づらさの差が大きく、チケット購入時の抽選で当たる席の運不運によって、かなり作品の感想が変わってくる劇場という印象が強い。

しかも、これまでの2年間で上演された作品はすべて劇団☆新感線の公演のみで、しかも集客のためか舞台にあまり出ない人気俳優たちを多くキャスティングしていて、他の舞台やミュージカルとは少し客層の雰囲気もなんとなく異質に感じたりする。

そのため、発表される出演俳優陣や演目に魅力を感じる一方で、チケット発売の時期になっても、ステージアラウンドでの公演は抽選の応募に不思議と躊躇いを感じることが多々ある。

ほとんどの舞台やミュージカルに対して、チケット発売されればとりあえずすべてに抽選応募し、また直接購入するほどなのだが、まったくの個人的感覚で申し訳ないのだが、なぜかステージアラウンド関連は食指が動きづらい。

しかし、今回のdisc2は、個人的に出演作品をすべて観ている大原櫻子が出るということで、「ま、メタルマクベスを1回も観ないのもなぁ……」と思っていたこともあり、disc2のチケット抽選に応募していた。

それほど積極的でない時ほど、チケットは簡単に当選し、しかも良席が当たるという不思議。今回、千穐楽近くの公演での前から10列目という見やすい席が当たったこともあり、今までほどの億劫な気持ちは少ない状態でステージアラウンドに向かった。

これぞ舞台! これぞTHE エンタテインメント!!

正直あまり期待していなかったぶん、大音量のメタルロックの演奏をバックに、広いステージをバイクで縦横無尽に走り回り、多くの敵を相手に大立ち回りを演じるパフォーマンスで幕を開いたオープニングシーンを観ただけで、「これぞ舞台の醍醐味!」と観に来てよかったと実感。

オープニングの数分で、高いチケット代の元を取った気分にさせてくれた。さすがは劇団☆新感線万歳!!

メタルロックの生演奏がまるで人気バンドのライブに来たような気分にさせ、気分を最高に高揚させてくれる。また無数の照明や特効による舞台演出とバイクを使った激しいパフォーマンスは、舞台を生鑑賞することでしか得られないワクワク感を引き出してくれる。

WOWOWやDVDでの視聴では決して得られることのできない、舞台の生鑑賞でしか得られないライブ感。これだけだけで1万円以上するチケット代はじゅうぶん釣り合うと言えるほど、特別な体験を提供してくれるのが舞台の素晴らしさであるということを、今回、改めて再確認させてくれた劇団☆新感線に心から感謝!!

「livest!」と銘打ち、実際のライブ体験で人生を豊かにすることを目指す者として、今回、改めてその重要性とプライスレスな価値を再認識できたことは最大の収穫と言える。

そして、そういう気持ちにさせるエンタテインメント空間&時間を提供する最高級のエンタテイナーの存在意義と価値の高さを改めて気づかせてもらえたことも大きかった。

これからどんな形であれ、人生を豊かにする体験の提供を目指す者として、今回のメタルマクベス鑑賞は大きな経験となったと言えるし、勇気やヒントももらったとも言える。

これぞ「ザ・エンタテイメント!」

「livest!」が目指すべき方向とその意義を教えてくれた劇団☆新感線と出演者たちに改めて感謝の意を示したい。

どれだけ自由な掛け算ができるかがエンタメ創造の勝負どころ

今回のメタルマクベスは、メタルロックと演劇(ミュージカル)という意外過ぎる組み合わせに、さらにシェイクスピアまで掛け算に加えるという普通の人には考えつかない計算式から生み出された最上級のエンタテインメントとなった。

また、メタルロック×女性アイドルグループという意外過ぎる組み合わせから誕生した「BABYMETAL」が世界中をツアーで回るほどの人気を博すなど、2006年時には想像もできなかった現象がメタルにとっての新しい追い風も吹いたということも、今回のNEWメタルマクベスが新しいエンタテインメントとして成立する大きな要因となっただろう。

さらに、髑髏城の七人シリーズやメタルマクベスのdisc1からdisc3にかけてのシリーズに共通する特徴として、劇団☆新感線の常連キャストに加えて、歌舞伎役者と舞台俳優、ミュージカル俳優、ジャニーズなど、異なる分野に軸足を置く 旬な俳優陣をキャスティングすることで、今までになかった組み合わせによる新しい魅力がたくさん創出されている。このことは、エンタテインメントに関係する人にとって、分析研究するに値する「エンタメ創造の勝負どころ」と言える。

多くの人を楽しませ、魅了するエンタメを創造するためには、誰も思いつかないジャンルの組み合わせから生まれる新しいエンタテインメントをクリエイティヴすることが重要なカギとなる。そのことをメタルマクベスははっきりと見せつけてくれた。

まだ知られていない、というか生み出されていない新しいエンタテインメントの要素は世の中に無数に存在すると言える。無数の掛け算の中から、「今」ならではの組み合わせを発見することこそ、クリエイターの勝負どころと言えるだろう。

劇団☆新感線「メタルマクベス disc2」

2018年9月15日(土) ~ 10月25日(木)

IHIステージアラウンド東京

【作】宮藤官九郎 

【演出】いのうえひでのり

【音楽】岡崎 司 

【振付&ステージング】川崎悦子

【原作】ウィリアム・シェイクスピア「マクベス」松岡和子翻訳版より

 

<CAST>

尾上松也

大原櫻子 

原 嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.) 

浅利陽介

高田聖子

河野まさと

村木よし子

岡本健一 

木場勝己

 

<MUSICIANS>

髙井 寿(guitars)

滝 和祥(guitars) 

大桃俊樹(bass) 

雨宮直人(drums) 

松﨑雄一(keyboards)

 

<STAFF>

【美術】堀尾幸男 

【照明】原田 保 

【衣裳】伊賀大介 

【音響】井上哲司 

【音効】末谷あずさ、藤森直樹

【小道具】高橋岳蔵 

【特殊効果】南 義明 

【映像】上田大樹 

【大道具】俳優座劇場舞台美術部

【舞台監督】菅田幸夫、芳谷 研 

【協力】松竹株式会社 

【制作】辻 未央、伊藤宏実 

【制作プロデューサー】細川展裕、柴原智子

 

【主催】TBS ディスクガレージ ローソンエンタテインメント 電通

【後援】BS-TBS TBSラジオ

【制作】ヴィレッヂ

【企画・製作】TBS ヴィレッヂ 劇団☆新感線

【特別協賛】株式会社オンワードホールディングス