私たちが月を目指さなければいけない理由

2019.3.11

musicalover

大きな犠牲と負担を背負って、私たちはなぜ月をめざすのか?

エンタメから人生を考える

映画「ファースト・マン」

 

We choose to go to the moon. We choose to go to the moon in this decade and do the other things, not because they are easy, but because they are hard. Because that goal will serve to organize and measure the best of our energies and skills. Because that challenge is one that we are willing to accept, one we are unwilling to postpone, and one which we intend to win, and the others, too.

 

私たちは、月に行くということを決めました。

私たちは今後10年以内に月に行き、さらなる取り組みを行うと決意したのは、それが容易だからではなく、困難だからです。

この目標が、私たちの持っている最大の行動力や技術を集結して、それがどれほど大きいものかを知るのに役立つからです。

この挑戦こそが、私たちが向き合うことを望み、先延ばしにすることを望まないものだからなのです。

そして、これこそが私たちが勝ち取ろうとするものであり、私たち以外にとってもそれは同じことなのです。

ーーJ.F.ケネディ

1962年9月12日

ライス大学のライス・スタジアムでの演説の一部

たちはなぜ月をめざさなければならないのか?

映画「ファースト・マン」をTOHOシネマズ日比谷にて鑑賞。

同館での上映最終日ということもあるのか、平日の昼間にも関わらず満席状態。
年配の男性1人客も多かったので、幼少期にアポロ11号の月面着陸をテレビで見たという人たちにとって、この映画は観たいと思うのかなと勝手に想像したり。

「ファースト・マン」は監督がデイミアン・チャゼル、主演がライアン・ゴズリングという、大ヒット映画「ラ・ラ・ランド」のコンビでによる人類初の月面着陸を成功させるまでの物語。

リアルタイムではないものの、これまでさまざまな形で目にし耳にしたアポロ11号の月面着陸。
人類の英知と勇気と不屈のチャレンジ精神が生み出した感動の宇宙ロマン……これまで、そんなキラキラ輝いた歴史上の栄光の出来事というイメージだった月面着陸。

しかもそんな輝かしい題材を映画化するのが、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の監督となれば、ホットでワームでヒューマンな映像になるものだと思っていました。

けれど、これまでの人類歴史上の中でも最高レベルの栄光の出来事のリアルな側面を、デイミアン・チャゼル監督は静かに重厚な視点で捉えた作品でした。

ソ連との宇宙開発の過剰な競争の中、アメリカ政府が威信をかけて臨んだ月面着陸計画。
それはアメリカのメンツを優先した挑戦であり、その無謀な挑戦の過程で何度も失敗し、多くの犠牲を払った結果に得た奇跡の出来事でした。

監督のデイミアン・チャゼルは、主人公のアームストロング船長を中心に、いつ夫であり父であるアームストロングが死ぬかもしれないという不安定な生活の中で彼をサポートする妻や子どもたちの葛藤や、生死の境界線上に立ちながら月を目指す宇宙飛行士たちの思いを静かに映し出します。

映画の中で、アームストロング船長は、人類の偉大な第一歩を月面に残します。
人類の栄光の記録でありながら、船長がスポットライトを浴びる選ばれしヒーローではなく、多くの責任を抱えながらギリギリの勝負の中、生き残った生身の人間だということを映画を観た私たちに教えてくれます。
アームストロング船長の月面に残した足跡の陰に、多くのアームストロングの戦友たちの死が積み重ねられてきたことを私たちは知ります。

日本ではあまり話題にならなかったようにも感じたこの映画ですが、恋愛映画であり、ミュージカル風のファンタジーな要素もあった「ラ・ラ・ランド」とはまったく違うテイストの作品だったことが期待外れだと感じた面もあるかもしれません。
しかし、私たちが普段から目にする「成功者」「勝利者」たちが、どれほどの苦難と危機を残り超えてきたのか、また同じ目標を目指した多くの仲間やライバルたちの失敗を経てきたのかを、この映画は改めてリアルに教えてくれます。

 

「ファースト・マン」

(原題:FIRST MAN)
監督/製作:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、 クレア・フォイ、カイル・チャンドラー ほか
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、アダム・メリムズ、ショジュ・シンガー
脚本:ジョシュ・シンガー
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
原作:「ファーストマン:ニール・アームストロングの人生」著/ジェイムズ・R・ハンセン
配給:東宝東和

 

『ラ・ラ・ランド』の監督と主演ライアン・ゴズリングがコンビを組んだ、映画『ファーストマン(原題)』の予告編が解禁となった。
2017年に大ヒットし、アカデミー賞最多6部門受賞したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』の監督デイミアン・チャゼルと、主演を務めたライアン・ゴズリングが再びタッグを組み制作した映画『ファーストマン(原題)』。

今作は、アメリカ人宇宙飛行士ニール・アームストロングが人類で初めて月面着陸するまでの1961~1969年の間の日々を描いた人間ドラマ。ニールを影で支えていた家族の絆、ニールが人類の歴史を作るために犠牲にしたものは何だったのか、そしてその歴史に残った伝説のミッションの裏側が明かされる。

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