「食」で肉体は蘇る!40歳Jリーガーの体質改善物語(第7回)
ラストイヤーと宣言した2020シーズン。完全燃焼をめざした安彦選手は、まず体質を根本から改善することを試みることにした。
花粉症などのアレルギー、便秘、高血圧などの悩みを解消し、ケガしにくい身体に改善するため、人生初めての本格的なファスティングに挑戦した安彦考真選手だったが、開始してすぐに身体が想像以上の変化を見せ始めた。
これは40歳でJリーガーとなった1人の男が徹底的に「食」を見つめ直し、さまざまな療法に取り組んだプロセスを赤裸々に語る物語だ。
「食」に関するさまざまなアプローチを実体験し、その時々の心境や結果を正直に綴った安彦考真選手による「40歳から始める体質改善」のリアルストーリー。
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「食」で肉体は蘇る!40歳Jリーガーの体質改善ストーリー
第7回
「アスリートと食」の関係を見つめ直す
安彦考真
僕は多くのスポーツ選手と同じく焼肉が大好きだった。
特に、ブラジルをはじめ南米で定番の肉料理である「シュラスコ(シュハスコ)」が大好きだった。
シュラスコは鉄串に刺し通された牛肉の塊を粗塩をふった上で炭火でじっくり焼く料理。
シュラスコレストランではシュハスケイロと呼ばれるウエイターがテーブルまで焼けた肉の塊を持ってきてくれ、目の前で鋭いナイフで食べたい分量を切り分けてくれるのが特徴。
日本や韓国の焼肉は自分で好きな肉を注文し、好きなタイミングで焼いて食べるが、シュラスコはちょっと違う。
次どんな部位の肉がテーブルにやってくるかシュハスケイロ任せなので、焼肉にはないワクワク感も楽しい。
(もちろん口頭で「次はあの肉を食べたい」と言えば持ってきてくれる)
日本でも大人気でなかなか予約が取れないシュラスコレストラン「バルバッコア」。
ここが僕の1番のお気に入り。
本場ブラジルでも人気の高級シュラスコレストランの系列店ということで味は抜群。ビュッフェ式で好きなだけ食べられるサラダバーも大人気のこのお店。
豪快に焼かれた美味しい肉を仲間でワイワイ楽しく食べられるということで、アスリートたちもよく来店している。
その証拠に、バルバッコアの店舗の入り口にはたくさんの来店したトップアスリートたちのサインが飾られている。
ブラジル人サッカー選手はもちろん、サッカー日本代表選手たちやプロ野球選手、格闘技の選手たちなど、誰もが知っている名前がズラリと飾られたエントランスの様子は壮観。
「あのトップアスリートも来ている!」とサインの数々を眺めるだけでも、このレストランの人気と実力がわかるというものだ。
僕も昔からこのレストランに客として足繁く通っていた。
時にサッカー界の重鎮のお供で、時に当時通訳として所属していたチームのブラジル人選手たちを引き連れ、時に友人の著名人を招待して、冗談で「僕の食卓」と言っていたほどの頻度で長く通っていた。
そんなこともあり、ブラジル人シュハスケイロはもちろん、店長さんとも顔馴染みとなっていた。来店するたび気軽に近況を立ち話するような良い関係を持つことができていた。
時には、サプライズで誕生日のお祝いをしてくれることもあり、僕にとってはただ大好きな肉料理が美味しく食べられるお店以上の大切な場所となっていた。
忘れもしない2018年春。
僕が練習生として参加していた水戸ホーリーホックからプロ契約を伝えられ、念願のJリーガーとなった直後のこと。
僕の無謀なチャレンジを応援し続けてくれた仲間たちが、バルバッコアでお祝いを企画してくれた。
Jリーガーとして初めての来店となったこの日、僕はいつも通り気軽に入店したが、店長を始め、お店のスタッフみんなが笑顔で僕を祝福してくれた。
それだけでも僕は最高に幸せだった。けれど、それだけでは終わらなかった。
なんと、店長から「入り口の飾らせて欲しいので、サインを書いてもらえないだろうか」と提案があった。
来店する客がみんな尊敬の眼差しで見ていた別世界のスーパースターたちのサインの数々。
僕も今まで遠い存在だと思っていた彼ら彼女たちと同じ場所に、店長は僕のサインを飾ってくれるというのだ。
僕はその時、プロ契約する時と同じくらい、いやそれ以上に、Jリーガーになったことを実感し、本当に幸せな気持ちになった。
そして、その後も、それまで以上にこのレストランに足繁く通うようになっていた。
トップアスリートとしての醍醐味とも思っていた美味しい肉料理を腹いいっぱい食べる食事。
牛肉を食べることでプロアスリートとしての肉体作りにつながると信じていた。けれど、その神話は間違っていたかもしれない……。
シュラスコをたらふく食べていた幸せな時間を思い出していた僕は、彼女の声を耳にしてふと我にかえった。
「きみたん」から僕は「食」に関する説明を聞いていた。
きみたんは、まだ出会ったばかりだったが、信頼できるパーソナルトレーナーからの紹介ということもあり、また彼女の説明がとてもわかりやすかったこともあり、すぐに彼女の言うことを信じることができた。
きみたん曰く「食事と(内皮という薄い細胞の層で血流の調整をする)血管内皮機能には相関があり、動物性タンパク質が体の中で炎症作用を起こしている」という。
血管は筋肉や臓器の必要な血液量に応じて拡張するのだそうだ。けれど、炎症によって血管の細胞が弱まると血管が拡張できず十分な血液が流れなくなってしまう。その結果、身体を動かすパフォーマンスが落ちてしまうのだと、きみたんは言う。
また「動物性タンパク質と脂肪の影響は大きく、食後6〜7時間、血液に影響を及ぼす」ということ。そして「日本人の腸は外国人の腸より2mも長い」ということ。その結果、消化に時間がかかり、腸の働きが悪くなるということを説明してくれた。
「安彦さんのアレルギーの原因はそこにある」と、きみたんは熱く語ってくれた。
彼女の言うことを信じたことで、僕が当たり前のように信じ込んでいたことが迷信だったと気づいた。「アスリートと言えば肉」と単純に考えていた僕にとっては驚くべき話だった。
びっくりしている僕に、きみたんはこう言った。
「まずアレルギーが起きている原因をなくすために排毒が必要だ」と。
そして、ファスティングに挑戦することを薦めてくれたのだった。
きみたんはファスティングがどういう効果を引き出すかを丁寧に説明してくれた。
簡単に言えば、体内で溜まってしまっている「自分の体が消化し切れないもの」を外に出すことと、消化するために必死に働き続けアレルギー反応を起こしている「腸を休ませる」ためということ。
僕にとっては思考の大転換だった。
これまで食べるもの、食べる量のことは考えていたが、それはそれらが栄養となり、血となり肉となるという前提でのことだった。
しかし、きみたんは「消化し切れない食べたもの」がむしろ身体に害をもたらしていると言う。
腹いっぱい食べて満足感に浸っていたこれまでの食事の多くは、精神的にはよいことも多かったかもしれないが、肉体的には無駄に負荷をかけていたことになる。
そして、年齢を重ねるにつれて、それがケガの発症を招きやすくなっていたり、花粉症などのアレルギー反応を酷くしていたかもしれないのだ。
善は急げ。
僕はきみたんと会った翌日から、早速ファスティングをスタートさせた。
きみたんが推奨するファスティングは、本来、酵素ドリンクを飲むだけで、一切何も食べないやり方がベストなのだが、僕はアスリートであり、毎日練習もあったので、流石に何も食べないわけにはいかない。
きみたんと相談した結果、まずは「ゆるファス」に挑戦しようということになった。
「ゆるファス」とは「ゆるいファスティング」という意味。
その中身はお粥と酵素だけで2週間を過ごすというもの。
きみたんと会った翌日、3月19日から僕は「ゆるファス」を始めた。
きみたんからは「最初は大変だけど、頑張って続けてください」とエールをもらった。
僕は「辛いのは空腹感が我慢できるかどうかくらいかな」程度に考えていた。しかし「ゆるファス」を始めてすぐ、僕の身体に大きな変化が現れた。
その変化に、僕はスタートしてすぐに空腹感とは別の辛さを体験することとなった。
(つづく)
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