オンリーワンをめざすほど孤独は増す。その孤独に勝てた者だけが真のオンリーワンになる資格を持つ
「会社を辞めて夢だったことで事業を起こす!」
周囲の人間が突然そんなことを言い出したとする。
多くの人は応援する姿勢をとりつつも、その無謀な挑戦を冷ややかに見つめる気持ちが心の奥底に浮かぶだろう。
ましてやそれが40歳という年齢の男が「仕事を辞めて今からプロサッカー選手になる!」と言い出せば、ほとんどの人は「絶対不可能だ」と心の中で確信するだろう。
どんな夢でも、今の環境をすべて捨てて夢を実現させようと勇気ある一歩を踏み出した瞬間、人は孤独を感じる。周囲はその無謀な挑戦に対して複雑な感情を抱いたまま、チャレンジャーとの距離感に戸惑いを見せる。
30代、40代になれば、そんな状況が嫌ほど想像できるからこそ、人は挑戦することに強いためらいを覚える。そして時間だけが過ぎ、年齢を重ねるほど無謀な挑戦をする勇気を失っていく--
「人はみな1人で生まれてくる」人は孤独を知っている。知れば知るほど孤独は怖いものになる。そんな恐怖に打ち勝った者だけが真の「自分らしさ」を手にすることができるのかもしれない。
安彦考真選手への質問
40歳での周囲からは無謀とも見えるチャレンジをする際、振り返ってみて最大の敵となったのは?
常識の範疇を超えた40歳にしてプロサッカー選手となるという無謀なチャレンジに挑み、見事にプロ契約を勝ち取った安彦考真選手。
「Jリーガーをめざす」と表明した第一歩から実際にプロ契約を勝ち取るまで、さまざまな障害が目前に立ち塞がったことは想像に難しくない。自身の心の中の障害、肉体的な障害、そして対外的な障害……数えきれないほどの障害の中で、振り返ってみてもっとも大きな壁となったものとはなんでしょうか?
安彦選手が感じた敵の存在、そしてその乗り越えた方法を知ることは、再挑戦への想いを心に秘める多くの人にとって、貴重な参考例となると信じています。
安彦考真選手の回答
「孤独を受け入れることこそが〝唯一無二の存在〟となれる方法」
最大の敵は「孤独」ですね。
「40歳でJリーガーをめざす」とは〝唯一無二の価値〟を手に入れることでもありました。
ただ、そこには孤独というトンネルがあり、真っ暗闇に飛び込んでいる感覚に襲われます。
このチャレンジは「自分の人生の後悔を取り返にいく」ことが、一つのテーマでした。
その後悔とは自分への嘘です。
嘘をつけば、その嘘を守るためにまた新たな嘘が必要になります。
厄介なことに、その嘘はどんどん巧妙になっていきます。
結果なにが起きるかというと、自分のことを「僕は」という主語で語れなくなるのです。
どこかで得た誰かの知識で塗り固められたその時には、もう自分の人生を自分で歩くスペースがなくなっていたのです。
だから僕は、すべてを捨てました。
仕事、家、お金、今まで嘘で手に入れたもすべてを捨てることで、自分の人生を歩くスペースを作ったのです。
自分としては、その瞬間すごくスッキリしました。
ただ、周りはというと気がつけばいろいろな人がそばからいなくなり、一人になっていました。
これが孤独の始まりです。
ただし、そこには「唯一無二」という価値もついてきます。
その唯一無二を磨けば磨くほど、孤独は増していきます。
しかし、チャレンジを可視化し、支援者を集めることで、そのトンネルを俯瞰で見れば、多くの仲間声を上げてくれていることに気がつくのです。
ただ、ここで問題なのは、その声に甘えるとまた嘘をつく自分が出てきてしまうと言うことです。
大事なのは、「唯一無二」を突き詰め貫きやり切ろうとすえうからこその支援者であり、仲良しこよしのための支援者ではないということです。
「孤独」を受け入れ「孤独」と共存することこそ「唯一無二」を輝かせる方法なのです。
その輝きこそが、このチャレンジの象徴であり、そこに人は集まるのだと実感しました。
孤独は最大の敵でしたが、僕の力を最大限に引き出すライバルでもあります。
暗くて厳しい道にこそ、世界を照らし輝かす光があるのです。
孤独と共存し、唯一無二の価値をつける。
この無謀とも見えるチャレンジが、教えてくれた最大にして最高の敵が、孤独です。