実体験をもとにプロアスリートが語る「脳しんとうの危険性」と正しい対処法について
リアルアンサー
2018年7月22日の質問
フランスの優勝で閉幕したワールドカップ2018ロシア大会。
興奮冷めやらぬ中、7月18日にJリーグが再開しましたが、日本代表としてワールドカップに挑んだ柏レイソルのGK中村航輔選手が、試合中の接触で脳しんとうを起こして退場しました。
中村選手はワールドカップ前のJリーグの試合でも同様に脳しんとうとなり、当時はワールドカップが心配されたという出来事があり、これが短期間で2度目の発症でした。
プロサッカー選手として、試合だけでなく日々の練習でも激しいプレーを繰り返す水戸ホーリーホックの安彦考真選手に、脳しんとうの危険性と起こった場合の対処法、その後の経過処置など教えてもらいました。
特に夏休みに入り、練習や試合が増える子どもたちにも知ってもらうという観点での解説をお願いします。
安彦考真選手のリアルアンサー
脳しんとうは最低7日間は安心できない〝見えづらい重症〟
今と昔では脳しんとうの対処方法のガイドラインがかなり変わってきていて、サッカー界でもより注意を払うべきケガという認識を持つべきものになっています。
その時は大丈夫でも、後ほど症状が酷くなる場合もあり、ただ頭をぶつけたというレベルでは済まない状態になることがあるので、十分に注意が必要です。
特にサッカー選手の場合、脳しんとうが起こりうる場面となることが多々あります。
一番多くあるのは、「ボールが空中に浮いている時」といえば分かりやすいでしょうか。
空中にあるイーブンのボールを競るためには、どうしても頭で行かなくては先に触れません。
この時、ヘディングをする際に、頭を振ってボールに加速をつけるヘディングをする選手がいますが、非常に危険も伴うので、腕を使ってブロックするなど、「自分ガード」を忘れないようにしてください。
じつは先日、僕も練習中に相手とぶつかり脳しんとうになりました。
僕の場合は不意打ちだったのもあり、「自分ガード」をすることはできませんでした。その結果、数分ピッチに倒れ込み、起き上がることができませんでした。
すぐに脳しんとうかどうかのチェックをしましたが、バランス感覚が若干崩れていたので、そのまま離脱しました。
そんな経験も踏まえ、脳しんとうになった際、どのように対処していくべきかをお伝えします。
まず、脳しんとうの可能性がある人に対して、意識があるかをチェックしてください。
意識がある場合は、話せるかどうかを確認し、記憶があるかを聞いてください。この時点で、答えられなかったり、意識がなかったら、即救急車を呼んで医師の判断に任せてください。
意識があり、記憶もしっかりしている場合は、目の焦点をチェックし、その後片足で立つバランスチェックをしてください。
目の焦点があっていなかったりバランスが崩れる場合には、その時点でその場から移動させ、軽い食事などを取らせたあと、できるだけ早めに病院へ向かってください。
ただし、食事前の段階で気分が悪く嘔吐の気配がある場合は、食事を抜いてすぐに病院へ行ってください。
ある程度診断をしっかり受け、医師から脳しんとう判断された場合は、最低でも5日間は別メニューとなります。
それまでの間、程度が軽ければ有酸素運動から始めていいので、トレーナーや医師の指示に従ってください。
もしトレーナーがいない場合は、軽度な状態に限り(めまいや気分の悪さ、食欲や素早く動けそうかなどいくつか症状のチェックがあるのでそこは医師に項目をもらうことをおススメします)、2日目からはジョグ程度の動きを始め、3日目、4日目と練習強度を徐々に上げていきましょう。
その際に、毎回めまいや気分の悪さなどのチェックを行なってください。
5日目までヘディングや対人トレーニングはNGです。
6日目からボディコンタクトがあるメニューを再開し、7日目で合流出来るのが最短です。
6日目の練習後に必ずもう一度受診をしてください。
そこで医師のチェックをしてもらい、必ずOKをもらった上で、チームの練習に合流する流れを作ってください。
その間に少しでも気分がすぐれないなどの症状がある場合は、必ず必ず指導者に伝えてください。
特に、受傷時に外傷がない場合はより細心の注意を払ってください。頭の中で異変がある可能性が含まれます。
指導者の皆さん! 脳しんとうは選手生命だけでなく人の命に関わることなので、絶対に軽くみないでください!
選手の皆さんも、自分の身は自分で守る意識を持つこと。またチームメイトが脳しんとうを起こしたら、上記の対処法を参考に早い処置を施し、大きなトラブルを未然に防ぐ意識を共有してください!