YSCC横浜の降格で考える、今すぐにすべきこと – 安彦考真のリアルアンサー

2024.12.9

livest!編集部

安彦考真選手への問いかけ

安彦考真選手の愛するクラブ、YSCC横浜のJリーグからの降格が決定してしまいました。

YSCC横浜は、地元に根付いた伝統あるスポーツクラブとして、Jリーグクラブという観点以外では気づかない、他クラブにない魅力があったクラブだったと思います。

改めて、安彦さんから見た同クラブの「個性」的な魅力を教えてください。

そして、他にはない「個性」を活かすという観点から、クラブのOBだからこそ提言できる、YSCC横浜が再スタートを切るためのヒントを教えてください。

安彦考真のリアルアンサー

2024年12月9日

 

YSがJクラブでなくなる瞬間を目の前で見ていた。

悔しさと虚しさと…怒り。

これが正直な感情だった。

 

YSは他のクラブにはない大切な役割を担っていたと思う。

横浜には、J1所属の横浜マリノスと来季からJ1昇格となった横浜FCがある。

そこにYSCCというクラブが存在する意義はなんなのか。

僕は代表の吉野さんが言っていた言葉を常に思い出す。

それは「誰も排除しない」という、一見すごくネガティブな要素を含む言葉であるが、僕には直接体温する感じられるくらい、生きた優しい言葉に思える。

「誰も排除しない」というクラブのポリシーが地域を支える

僕が在籍時代、横浜市寿町でアルコール依存症の方々30名ほどを対象に講演会を行なったことがある。

寿町は「日本三大ドヤ街」と呼ばれる地域だ。

そこに、様々な背景を抱えた人々が訪れている。またそこで実際に生活にしている。

横浜マリノスや横浜FCが入ることができないエリア。

そこにはYSCC横浜という地域クラブだからこそ関われている現状がある。

僕はそこでアルコール依存症を戦う人たちが、必死に頑張って社会復帰をしようとしている姿をみた。

僕の講演最中、寝そうになるが必死に話を聞こうと頑張っている姿も見た。

誰にだって今の状況を変えたいと思うことがあるだろう。しかし色々な意味で依存してしまうとそこから抜け出せない。それはアルコールに関わらず多くの人が何かに依存して一歩前へ踏み出すことができない。

吉野さんは、そんな方々も含め「排除しない」と決めたんだと思う。

 

また、以前ミャンマーの選手が亡命してYSCCに入団すると言うニュースが流れた。

それもYSCCが掲げる心と同じように、誰も見放さない、誰も排除しない、という「心」に従った結果だと思う。

だからYSCCはJリーグであろうがなかろうが、地域によっては必要不可欠であることがハッキリわかる。

再スタートに向けたOBからの熱い提言

ただプロクラブとしては利益を出して存在価値を深めていかないといけないと言う視点においては、今回の降格は非常に厳しい状況になる。

だからこそ、YSCCはここから新たな視点で再スタートを切る必要がある。

 

そこで、僕の中で2つの提案をしたい。

 

一つは、Jリーグへ戻るために3〜5カ年計画を立てること。

もう一度、YSCCはどんな哲学でどんな人たちのために戦うのか。

そこを明確にすること。そのためにはめちゃめちゃ細かいがホームページから変える必要がある。

“サッカークラブとしてうたわない”

地域に必要な“プレイス”としてもう一度再出発をするべきだ。

地域リーグになったからこそ、強さ以外のものの価値を強めて、そこに本当の意味でのスローガンを掲げるべきだ。

 

そして、もっと地域から応援されるクラブにならないといけない。

Jリーグは今シーズン、年間総入場者数が12,540,265人となり、過去最多を記録した。

しかし、Jリーグに所属しているY Sは、入場者数は平均2000人を下回る。

であれば、問題はJリーグにあるのではなくクラブにある。

地域リーグで平均2000人の入場者数を獲得するためには、サッカークラブにならないことが必要だと思う。

 

クラブの存在価値を共有した者だけが再生を目指せる

2つ目は、選手だ。

中途半端な選手をどこからともなくとってくるが、選手選考を見直すべきだ。

昨日の入れ替え戦では全く何も感じられないプレーヤーばかりだった。

強いて言えばゲームキャプテンを務めた萱沼優聖選手だけ。

 

あの場はカッコよさとか、うまさとか、素晴らしい戦術なんていらない。

なんとしてでも勝ちたい、絶対に負けたくないと言う頑なな想いが必要だったはず。

それが誰からも感じられないのはクラブの体質の問題。

 

それは選手選考にある。

JFLでは最低年俸を気にする必要がない。

であれば、中途半端な選手にお金をかけて一年で昇格を目指すより、「YSCCとはなんのために存在して、誰のためのクラブなのか」をちゃんと理解している選手を選び直すべきだ。

いやもっと言えば、ここはシビアになってクラブの未来のために厳しい処置をとることが求められるはず。

 

全員解雇にしてゼロベースで見直す覚悟を持つことで、中途半端な気持ちの選手は自ら離れていく。

それは決して排除ではない、と僕は考える。

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