舞台裏のプロたちによる最高級のエンタメーー「シークレット・ガーデン」

2018.7.11

livest!編集部

アラフォーからの舞台&ミュージカル鑑賞

ミュージカル「シークレット・ガーデン」

2018年7月4日

昔から好きだった。ちょくちょくは気になる作品は観に行っていた。けれど、映画と違い、舞台やミュージカル、特に人気の演目は前もってチケットを予約確保しておかなければ、上演が始まってからでは「観たい」と思いついても観れないことが多い「事前の入念な計画が必要となる」趣味だ。

ミュージカル「レ・ミゼラブル」に感動し、ロンドンではクイーンズシアター劇場で本場の「Les Misérables」を鑑賞したし、ニューヨーク・ブロードウェイでは「キャッツ」や「ライオンキング」も鑑賞した。けれど、そういった海外出張のついでに観る舞台と違い、日本でのミュージカル&舞台鑑賞は初心者には敷居が高いと感じさせる何かがあった。

アラフォーとなり、時間とお金をかけて何かに没頭したいと考えた時、改めて「しばらくは舞台やミュージカルを観まくるぞ!」と決意。時に開演の半年以上前、チケット発売初日にほとんどの作品のチケットを予約しまくった。そして2016年から最低週1回ペースで舞台やミュージカルを観まくる日々を続けている。

これは何の基礎知識もない、ヲタクでもない、舞台&ミュージカルのアラフォー初心者が綴った鑑賞日記だ。ここから学べることは1つ。「アラフォーになってからも趣味は始められる」ということ。

さあ初心者だからこそ書ける見当違いかもしれない舞台&ミュージカル鑑賞記録を始めよう。

ミュージカル
「シークレット・ガーデン」

2018年7月4日 @シアタークリエ

 

staff

脚本・歌詞: マーシャ・ノーマン
音楽: ルーシー・サイモン
原作: フランシス・ホジソン・バーネット「秘密の花園」
演出: スタフォード・アリマ

訳詞: 高橋亜子
音楽監督: 前嶋康明
振付: 岡 千絵
美術: 松井るみ
照明: 高見和義
音響: 山本浩一
衣裳: 太田雅公
ヘアメイク: 宮内宏明
歌唱指導: 満田恵子
演出助手: 豊田めぐみ
舞台監督: 宇佐美雅人
制作: 清水光砂
プロデューサー: 小嶋麻倫子

製作: 東宝

 

cast

アーチボルト:石丸幹二

リリー:花總まり

ネヴィル:石井一孝

マーサ:昆夏美

ディコン:松田凌

メアリー:池田葵、上垣ひなた(ダブルキャスト)

コリン:大東リッキー、鈴木葵椎(ダブルキャスト)

 

実力派staffとcastが勢ぞろいで、純日本キャスト初演となる名作ミュージカルが華麗に花開く

シアタークリエで、ミュージカル「シークレット・ガーデン」を観賞。
名作『秘密の花園』のミュージカル化で、90年代のブロードウェイ来日公演以降、純日本キャストで公演は今回が初とのこと。
花總まりさんは、先日鑑賞した『モーツァルト!」も出演していて、大きな舞台に出ずっぱりの印象。それだけ実力&人気が高いのだろう。
昨日も、花總さんがソロで歌唱するシーンでは、周囲の女性が一斉にオペラグラスを掲げる場面を多々目にした。きっとタカラヅカ時代からのファンの人も少なくないだろう。
継続、継承、積み重ねの重要性を改めて感じた。

 

舞台鑑賞時には必ずパンフレットを購入して、公演前に読み、事前勉強して鑑賞するのだが、最近は「スタッフ」欄を見るのが一番の楽しみになっている。
過去に鑑賞した作品で、印象深い舞台装置や衣装、音楽などを担当したクリエイターたちの名前をパンフレットで見つけると、その人の世界観が徐々に理解でき、今回の舞台もより楽しめるという〝ちょっと上級の舞台の楽しみ方〟を身につけた(笑)
これも鑑賞した舞台が増えることによる楽しみであり、知識と経験だ。お金と時間がかかるぶん、身につくものも確実に増える。

 

「シークレット・ガーデン」の感想は、まずは舞台装置、舞台装飾の素晴らしさが印象深い。
大きな3つの壁を開いたり折り畳んだりすることで、幾つもの別の世界を見せるやり方はシンプルながら効果的で、しかも舞台上に設置された3つの壁にいくつかの出入り口があり、その出入り口を演出として効果的に活用していた。
さらに最後のシーンでは、この大きな壁一面が「秘密の花園」というタイトルにふさわしい煌びやかで生命力溢れる花や緑で満たされたガーデンを表現していて、とても印象的なフィナーレとなった。
また実質的な主役として出ずっぱりだった「メアリー役」の女の子の演技が落ち着いていて素晴らしかった。
普段は子役の演技が大げさ過ぎて世界観に入ることを邪魔すると感じる作品も少なくなかったが、今回の女の子(池田葵さん)は大人の女優と混じっても違和感が少なく、素晴らしい表現者だった。

 

平日の昼公演ということもあり、観客はほぼ女性、それも少し年齢は高めの印象。タカラヅカ公演時のような雰囲気だった。
自分を棚に上げて言えば、平日の昼間に1万円以上もするチケットを買って3時間以上もの舞台を鑑賞できる人って、すごく幸せな人生だと思う。
日比谷ミッドタウン周辺が大規模再開発されたことで、シアタークリエ、宝塚劇場、日生劇場などが密集するこの辺りがよりエンタテインメントの街の雰囲気となって、駅から出て劇場に向かうまでの道を歩くところから、その日の最高のエンタテイメントを楽しむ心準備ができるようになった。
効率的な再開発を目指すなら、もっとたくさんの建物を建設できると真の一等地のスペースに、あえてゆったりとしたレイアウトで日比谷ミッドタウン周辺をデザインした土地所有者の思いに感謝しつつ、道中にその心意気を受け止め、劇場での非日常感を心から楽しもうと感じた。

 

名作ミュージカルだけでなく、観れる限りたくさんの演劇含めた舞台を見るようになってから、1つ1つの作品の良さやメッセージをより深く感じることのできるアンテナがようやくできてきたような気がする。
役者の演技やストーリーといった表層的なものだけでなく、この作品をクリエイトした背景や演出の意図など、いろいろな作品を短期間で観たり、同じ作品を何度も観たりしていることで、少しずつ感じる瞬間が増えてきたような気がする。
そして、この「シークレット・ガーデン」や「レ・ミゼラブル」「ロミオ&ジュリエット」のような原作自体が名作中の名作のミュージカルについては、その原作自体ついての知識を身につけた上でミュージカルを鑑賞することで、ミュージカルの演出家が原作に対してどのような解釈をしようとしているのか、原作からどのようなインスピレーションを受けてミュージカル作品に落としこもうとしたのかなど、少しずつわかる(というより自身の独自の解釈ができる)ようになった気がする。

 

また「モーツァルト!」のようなミュージカル作品であれば、モーツァルトについて、その生涯やエピソードについて知り、残された作品をたくさん聴くことで、よりミュージカル作品の意図や狙いを感じることができ、演出家の思いを感じることができる。
こうやって小説や楽曲、歴史、地理に至るまで、1つの作品から興味を派生することができるという意味で、ミュージカルが総合芸術と呼ばれる所以なのかもしれない。

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