「愛する」ということ、「愛が成就する」ということとは?
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」
東京国際フォーラム
「愛する」ということと「愛が成就する」ということ
「ロミオ&ジュリエット」はさまざまな愛が絡み合ってストーリーが展開していく物語だ。
登場人物たちのほとんどはヴェローナの地で愛を叫び、愛に苦しみ、愛に翻弄される。
主役であるロミオとジュリエットの若く純粋無垢な愛を筆頭に、ジュリエットを妻にしたいというパリス伯爵の愛と、いとこであるジュリエットへの叶うことのないティボルトの積年の愛。
そんなティボルトに対して、愛のない夫婦生活を続けるキャピュレット夫人が抱く若く逞しい甥への禁断の愛。
また同じ愛情でも、ロミオの母モンタギュー夫人の息子への母親としての深い愛や、自分の本当の子ではない娘ジュリエットに対する義父キャピュレット卿の愛といった親子間の愛。
そして、ジュリエットを実の子のように愛し守り抜く乳母の愛や、ロミオとベンヴォーリオ、マーキューシオらの親友同士の友愛。神父としてロミオとジュリエットを結ばせたいと願う慈悲の愛など。
主要人物たちは、それぞれ愛憎の感情で複雑に絡み合い、物語が展開する。
しかし、すべての登場人物の「愛」は成就することなく尽き果ててしまう。
「人を愛する」ということはどういうことか。
成就しない愛に悩みつつも、自身の愛を貫くそれぞれの登場人物たち。
そんな叶わぬ「愛の標本」を目の当たりにして、観客は自身の経験や現状に結びつけて感情移入していく。
豊かさや地位をアピールして相手を振り向かせようとする者、相手の気持ちを尊重して自分の想いを抑える者。ぶつかり合いながら愛を確認する者たち、そして静かに見守る深い愛。
「ロミオ&ジュリエット」の中で表現される愛のほとんどは一方通行で、相手に受け取ってもらえない成就しない愛ばかりの中、唯一の両想いとなったロミオとジュリエットの愛は悲しい結末を迎えてしまう。
「愛が成就する」とはどういうことか。
この物語の登場人物のほとんどの愛する想いは、相手の死によって行き先を見失ってしまう。
しかし愛した相手の死後、彼ら彼女たちの愛がすぐに消え去ったわけではないだろう。では、それらの愛は果たして成就したのか、しなかったのか。
そして、ロミオとジュリエットの愛は結局、成就したのか、しなかったのか。
この愛の都ヴェローナの地で愛に生き、愛に死す彼ら彼女たちの姿を見て、それぞれの胸中で愛の定義が模索されていく。
自分が今生きる世界で、自分の中の愛の存在と愛の行く末を思い描きながら。
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」
2019年2月23日~4月14日
東京国際フォーラム ホールCほか
【スタッフ】
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎
【キャスト】
古川雄大/大野拓朗(ロミオ)
葵わかな/木下晴香/生田絵梨花(ジュリエット)
三浦涼介/木村達成(ベンヴォーリオ)
平間壮一/黒羽麻璃央(マーキューシオ)
渡辺大輔/廣瀬友祐(ティボルト)
大貫勇輔(死)
春野寿美礼(キャピュレット夫人)
シルビア・グラブ(乳母)
岸祐二(ロレンス神父)
宮川浩(モンタギュー卿)
秋園美緒(モンタギュー夫人)
姜暢雄(パリス)
石井一孝(ヴェローナ大公)
岡幸二郎(キャピュレット卿)
ほか