安彦考真「インスタライブ配信成功の秘訣とは?」(第3回)
コミュニケーション上級者になるコツ
2020年5月16日
安彦考真
安全で快適に過ごせる環境が整っている素晴らしい国、日本。
そんな世界に誇るべき住みやすい日本で、ただ何となく日々を過ごしてしまうと、なかなか「深く考える」機会を持つことがない。必要がない。
そんな生活を続けているうちに、脳が働く機会が減っていく。昨日と一昨日の違いがわからず、1週間前の出来事や天気、人との会話の内容がさっぱり思い出せなくなってくる。
試しに、普段の通勤の道中に工事中の場所を見かけた時。果たして、工事をする前の様子を明確に思い出せるだろうか。
毎日通っている場所が工事中なのを見かけても、「ここは工事する前は何だったっけ?」というふうに全然記憶してないことに驚く時がある。
そんなふうに、普段体験しているさまざまなことも、記憶として残っておらず、自分のものにならず、そんなことがあったなで終わってしまっていないだろうか。
重要なことは、日々本当に深く深く考えているかどうか。
僕はこのことを普段からとても強く意識している。
自分がどんな目的を持ち、何のためにそのプレーをし、何のためにこのクラブに所属し、何のためにサッカーをやってるか。
そういったことを明確にしながら日々全力で生きている。
だからこそ、僕は何となくの会話があまり好きではない。
例えば、選手と会話をする際に「プロとは何なのか」をお互い暗黙の中でも明確に自覚した上で「プロとして」を語りたいと考えてしまうタイプなのだ。
僕の発案で始まったチームメイト全員と1対1で語り合う「YSインスタライブ」は、チーム全員、総勢27人のリレーが無事完了した。
そして、間髪入れずに「”YSバトン"インスタライブリレー」として、元YS選手を「いいとも方式」で繋ぐライブをスタートしている。
これは僕にとっては新たな挑戦だ。
なぜなら、あまり詳しく知らない選手とライブ配信で対峙し、即興で濃い会話をしなくてはいけないからだ。
そんな条件でも見ている人の時間を無駄にしたくない。
せっかく実行するのだから、せっかく誰もが観ることのできるライブ配信を行うのだから、Y.S.C.C.横浜のファンの人たちだけではなく、他のチームのファンの人、サッカーファンの人たちも見てくれる可能性があると自覚し、取り組もうとしている。
このライブ配信を少しでも日本のサッカー界を盛り上げる一助にしたいと思っている。
だからこそ、出演してくれた選手たちが発する言葉をホスト役としてしっかりと聞き、選手が伝えたいことを視聴者の人たちにしっかりと届くようにしなければならないと考えている。
※丸山雄介選手とのインスタライブの様子
だから、僕は事前の準備を万全にしている。
もちろんWikipediaを見ただけではダメで、過去のインタビュー記事などをネットで検索したり、知り合い経由でその選手の情報を事前のリサーチしたりすることに結構な時間を割いている。
そしてそこで得た情報をもとに、僕なりに綿密な会話の構成をイメージしながら実際トークしている。
そして、準備した情報をもとに会話を展開しつつ、その過程で見つけた小さなトピックやキーワードとなりそうな言葉を拾い、臨機応変に深掘りをしていくことを意識している。
ただ漠然と全員を出演させることが目的の企画なら、これほど視聴者は増えなかっただろうし、途中で挫折していたかもしれない。
画面から見える当意即妙な僕のトーク力だけでこの企画が成立するなら、僕はサッカー選手ではなく、別の職業に就くだろう。
普段通りのリラックスした表情で初めて深く語り合う選手相手に、1時間程度のトークを成立させているのは、それまでの地味な準備の成果だ。
まさに水面下では懸命に足を動かす水鳥のように、地味だけれど重要な努力は目には移りづらいということだ。
このインスタライブの成功をきっかけに、僕は個人的に話を聞きたい選手に直接アポを取り、インスタライブのオファーを出すことを試みた。
思い立ったら即行動。これが僕の行動指針だ。
すると早速そのアクションに応えてくれた選手がいた。
第1回のゲストとして登場してくれたのは、川崎フロンターレの長谷川竜也選手。
じつは僕と彼は面識はあったが、これまでじっくり話したことはない。
同じJリーガーではあるものの、年齢もかなり差があるし、経歴も所属するリーグも違う。
それでも、彼がサッカー以外のことを普段からしっかり考え、新しい挑戦をしたいと考えていることを知り、「彼となら面白いトークができるのでは」と考えてオファーした。
彼は今、自身が書くブログなどを通して、積極的に発信を始めていた。
「長谷川竜也 note」
vol.1『なぜ発信を始めようと思ったのか』
https://note.com/mfhmmt16/n/n444b540d4865
その内容は、自分の生い立ちからトレーニング理論まで幅広い。ただの日記ではなく、毎回意図を込めた内容のしっかりとした文章を書いていた。
その中で「なぜ今、自分が発信するのか」について、考えを書いていた。
その文章はとても丁寧で要点がまとまっている素晴らしい内容だった。それを見た時にこの選手と一緒にインスタライブをしたいと思ったのだ。
長谷川選手とのインスタライブでは、僕の事前の予想通り、彼の人間としての面白味に触れることができた。
その結果、4000人以上の視聴者が集まってくれた。フロンターレのファンからも「すごく良かったです」という言葉をたくさんもらった。
僕自身彼と会話してすごく楽しかった。
それは、竜也くんがひとつひとつの自分のプレーやその時の感情などを詳しく覚えていて、それぞれを明確に解説できるほど意図ある行動を続けていると知ったからだ。
彼は想像力が豊かで、教養がある。
彼が使う言葉や例え話は非常にイメージしやすく、その結果、一つのトピックに対してどんどん深掘りができる。
そういう会話はやっていて非常に楽しい。おそらく観てくれた人たちもそんな中身のある会話を見て楽しんでくれたはすだ。
少し前の僕ならば、ノリや勢いだけで何か面白いことを言って終わる、ということもよくあった。
しかし、今の僕は「この例えにはこう返そう」「この考えにはこんなアプローチをしてみよう」「こんな言葉を使ったらどう理解してくれるか試してみよう」など、言葉の持つ意味をしっかり考え、相手の考えを想像することを楽しむようになった。
ただその快楽に溺れてしまい、自己満足の深みにハマって視聴者を置き去りにはしていけない。
だから、適宜分かりやすい説明を差し込んだりしながら、より相手の言葉に深みを持たすように意識している。
「長谷川竜也 note」
vol.5『人との出会いを大切に』
https://note.com/mfhmmt16/n/n444b540d4865
インスタライブを続けたことで、言葉の持つ意味や大切さ、自身の考えを発信する意義についてなど、僕自身今まで以上に深く考えることができた。
だから、ぜひシーズンが始まってもインスタライブを続けていきたいと思っている。
現時点で、竜也くんの次は、名古屋グランパスの丸山祐市選手や川崎フロンターレの小林悠選手とのインスタライブの開催が決定している。
それらの感想は改めてリアルアンサーしていこうと思う。
(つづく)