意外と知らない「疲労」のメカニズムを理解して酷暑を楽しもう

2018.8.6

livest!編集部

意外と知らない「疲労」のメカニズムを理解して酷暑を乗り切ろう

普段から常に感じ、日常生活の中でよく話題にもする「疲労」。しかし、この疲労というものを私たちは意外と曖昧にしか理解していない。
疲労はどのようにして起こるのか? 人はどのようなメカニズムで疲労を感じるのか? アラフォー世代にとっては切っても切り離せない疲労について、もっとちゃんと理解することで、その回避方法を知ることができるかもしれない。
渡辺恭良さんと水野敬さんの共著「おもしろサイエンス 疲労と回復の科学」を読み、その中から疲労について考察してみた。

「おもしろサイエンス 疲労と回復の科学」
渡辺恭良、水野敬 著

「おもしろサイエンス 疲労と回復の科学」

渡辺恭良、水野敬 著

日刊工業新聞社 2018年6月28日発行

疲労の原因は、細胞の過活動による「生体酸化」

そもそも「疲労」とはどのようなメカニズムで発生するのだろうか?
渡辺恭良さんと水野敬さんの共著「おもしろサイエンス 疲労と回復の科学」によると、疲労とは「運動性疲労」と「精神作業性疲労」の2つがあり、それぞれ「筋肉細胞」、「神経細胞」の過活動による「生体酸化」が原因で発生するという。

私たちが「疲労」を感じるメカニズムを解説すると、以下のような流れらしい。
呼吸に付随して産生される酸素ラジカル(活性酸素)の量が体内で過剰となってしまい、その結果、生体還元系の処理速度が間に合わなくなり、体内の重要な栄養素であるタンパク質や脂質などが酸化されてしまう。そのことにより、細胞そのものや重要な細胞内オルガネラ(細胞の中の核やミトコンドリアなどの小器官)や部品が傷んでしまう。その傷害を感知した免疫系細胞が「免疫サイトカイン」というシグナルを脳神経系・内分泌系などに送り、修復を試みる。
この修復の際に、修復エネルギーがじゅうぶんでない場合、「疲労」が長引き、慢性的な疲労感を感じるようになるという。

つまり、「なんとなく疲れてやる気が出ないな」という時の状態は、仕事のし過ぎや考え過ぎが一定量を超えて神経細胞が過活動となり、体内で増え過ぎた活性酸素によって神経細胞が傷つけられてしまい、その修復が通常の手順では手に負えなくなった結果に疲労感として感じるということ。
体の疲れを感じる原因が、運動のし過ぎであるということは経験上わかっていたが、気持ち的な疲労感もメカニズムとしては同じだということだ。頑張り過ぎると神経細胞も筋肉の細胞のように傷ついて修復に時間がかかると考えると、疲労感の原因もスッと理解できる。

その昔からの固定観念はじつは間違いだった⁈

筋肉疲労でいうと、アラフォーくらいの世代は、激しい運動をすると「筋肉に乳酸が溜まった」ことが疲労の原因と思い込んでいる人も少なくないだろう。しかし、渡辺恭良さんと水野敬さんは、この思い込みが勘違いで、「乳酸は疲労原因物質ではない」と記す。

本によると、ここ10年で乳酸は疲労原因物質ではないことが判明しているという。
乳酸は激しい筋肉運動で筋肉内や血液中で上昇するのは事実だが、疲労の程度にかかわらず血液中で上昇することが動物実験でわかっていて、動物に乳酸を投与しても疲労状態を生じないという。

そのほかにも、なんとなく体感していたが知らなかた疲労の事実として、「紫外線による疲労」というものもこの本に書かれていた。
暑い夏、炎天下の下で長時間いると、たとえ激しい運動をしていなくても疲労感を感じた経験を持つ人は多いだろう。海やプールサイドで日光浴をすると、寝そべっているだけで泳いでもいないのに、疲れを感じるのは、紫外線が体に当たると疲労となるためだと本に記されている。
また、特に注目は「紫外線からの疲労」は、皮膚だけでなく眼も紫外線情報を感知することで疲労を感じるという。暑い日はサングラスをするなどして、できるだけ目から紫外線を受けないように予防することも、疲労を軽減するテクニックとして記憶したい。

疲労と戦うために推奨される栄養素と食材

最後に、本に紹介された「エネルギーを増大させ、抗疲労に効果のある栄養素と食材」の中から注目のものを抜粋する。

①イミダゾールジペプチド(カルノシン、アンセリン、バレニン)
②ビタミンB1
③還元型コエンザイムQ10
④クエン酸
⑤パントテン酸
⑥L-カルチニン
⑦ビタミンC
⑧アスタキサンチン

①イミダゾールジペプチド(カルノシン、アンセリン、バレニン)は、抗酸化作用、pH調整作用、疲労軽減効果があり、1日の摂取推奨量は200mg。食材としては、鶏胸肉、カツオ、マグロ、豚ロース肉などに多く含まれるとのこと。

②ビタミンB1は炭水化物をエネルギーに変える効果があり、1日に1.1mgから1.4mgを摂ることを推奨されている。ビタミンB1を多く含む食材として、豚ヒレ肉、生ハム、うなぎ、たらこ、大豆乾、青のり乾などが挙げられている。

③還元型コエンザイムQ10は、栄養素をエネルギーに変える必須物質、抗酸化作用も有するということで、イワシ、豚肉、牛肉、オリーブオイル、ブロッコリーを摂ることである程度補えるとのこと。しかし、1日の推奨摂取量である100mgは、これらの食材だけでの摂取は困難ということで、最終的にはサプリの併用の必要がありそうだ。

④クエン酸は、夏の飲料などにも謳い文句としてよく見られ、一般的にも知られている栄養素で、修復エネルギー産生のためにTCA回路を効率よく働かせる効果があるとされる。1日の推奨摂取量は1g。レモン、みかん、グレープフルーツ、いちご、キウイ、梅干し、酢などに多く含まれている。

疲労のメカニズムを理解することで、疲労を軽減する習慣をつける

特に今年は酷暑ということもあり、例年以上に疲労感や倦怠感を感じながら仕事やスポーツに取り組んでいる人も多いだろう。
この本に書かれている情報に加えて、自分なりに疲労のメカニズムを調べ、理解することで、疲労感によるパフォーマンスの低下を避け、この夏しかできない成果を高めよう。
摂取すべき栄養素を多く含んだ食材を積極的にチョイスし、また紫外線をできるだけ避けるなど、疲労を避ける習慣を身につけて、この酷暑を乗り切ろう。

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