皿の上の「遠慮の塊」を食べるのは誰だ?

2019.2.2

安彦考真

Jリーガーが見たアジアカップ2019準優勝の原因と改善法

リアルアンサー

2019年2月3日

最多5度目のアジア制覇をめざした日本代表と初優勝をめざすカタール代表との一戦となったAFCアジアカップ2019決勝は、1-3で次回ワールドカップ開催国のカタールが悲願のアジア王者に輝いた。

強豪イラン代表との準決勝を素晴らしい試合で3-0と快勝した日本代表だったが、決勝では前半で2点を失うなど、本来の力を発揮できないまま無念の敗戦となった。

今シーズンよりJ3リーグ・Y.S.C.C横浜に完全移籍した安彦考真選手は、今回のアジアカップを見てどう感じたのか?

現役Jリーガーが見た決勝での敗因とアジアカップでの日本代表の良さと弱点とは? プロサッカー選手だからこそ感じた日本サッカー界の問題点と可能性を語ってくれた。

AFCアジアカップ2019を終えて感じたこと

安彦考真

Y.S.C.C横浜

 

アジアカップ準優勝で幕を閉じた我らが日本代表。

純粋に健闘を讃えたいと同時に、いくつかの不安と疑問が浮かんで来たので、それを整理したいと思う。

 

準決勝のイラン戦は、いつになく激しい戦いを魅せ、尚かつ冷静で威風堂々とした姿勢が多くのサッカーファンを唸らせた。

僕らサッカー選手の代表であり、国民の代表でもある彼らを誇りに思えた。

そして、多くの期待を背負って挑んだ昨日のアジアカップ決勝戦。

ファイティングポーズを取ることを忘れてしまったかのような前半。

失点シーンだけフォーカスするわけには行かないが、プレミアリーグで戦う吉田選手があのオーバーヘッドを予測できなかったのか?という疑問と何故顔を背けるディフェンスをしたのかが理解できない。

 

水戸ホーリーホック時代、僕が驚かされた一つにDFでキャプテンの細川淳矢がシュートブロックをする際に一切顔を背けないで顔面も含めた全身でブロックにいく姿だ。

結果、J2リーグでのシュートブロック率ナンバー1は彼である。

ボール最後まで見るからこそ身体に当てることができる。
吉田選手が顔を背けなかったらどうなったかは分からないが、少なからず、リプレーでのいい教材にはなったはずだ。

余談だが水戸ホーリーホックの細川選手は至近距離でのスーパーシュートを顔を背けず喉でボールを受け止めゴールを死守した。

その代償は「高い声」を失い、カラオケで高音が出せないという顛末。
爆笑でしかないwww

 

話を戻そう。

2失点目も同様に吉田選手の経験をもとに言えば、プレミアリーグでは当たり前の距離感なのではないだろうか。

 

J2所属時代の昨年、J1との差を選手に聞くと技術なりスピードなり要素はいくつか出てくる。

その中でも一番はシュートレンジの問題だ。

どの距離からでも打てる選手がいるという前提になるので、それ自体が脳内フェイクになっているということだ。

カタールを「世界」と位置づけていなかったとしたら「甘い」という一言だが、日本代表スタッフがそんな分析をするわけがない、とすると自国リーグで経験が活かせていなかったのか…きっとそれも違うはず。

そうすると何が起きていたのか。

それを象徴するシーンが映像に残っている。

失点後の堂安選手の悔しがるゼスチャーだ。

悔しがるというより、怒りに近いような腕を振り上げ振り下ろすゼスチャーだ。

あのシーン、得点をしたカタール選手は堂安選手、塩谷選手、長友選手、吉田選手のボックスの真ん中で受けた。

そこで生まれたのは、「コイツを見るのは誰だ!」現象だろう。

そして全員が「俺には見るべき相手選手がいた」と答えるだろう。

堂安選手のゼスチャーは自分のマークではないことを主張し、仲間への怒りとなっていた。

シュートを打たれる寸前に塩谷選手も一瞬迷いを見せている。

日本人のいい部分として「一体感」や「集団行動」などみんなで一つのことをする能力は非常に高いと思う。

しかし、「遠慮の塊」と言われる言葉があるくらい、みんなでご飯を食べに行くと必ずと言っていいほど食べ物が何故か一個(一口)残る。

処理をするのが嫌なのか、がめついと思われたくないのか、最後の一個までみんなでシェアしたいのか…笑

あの2失点目は、正に「遠慮の塊」だったのではないかと思う。

日本が強くなるためには、海外での経験やJリーグのレベルアップも重要だが、文化の改善も必要だと思う。

しかもそれは、有形なものではなく、無形なものだ。

教育や指導方法の中で、ルールに乗っ取らせるのではなく、アイデンティティを形成させるような方法をしない限り「遠慮の塊」
はなくならないし、こんなもんでいいだろう精神は消えていかない。

いいも悪いも、全てその環境下の中で培われる個人のマインド。

みんな一緒の我が国日本は、それぞれ一人ひとりとしての責任を負う育成に変えなければいけないと痛感した試合だった。

 

僕は一人のJリーガーとして、日本代表になれる権利がある。

代表に入りたい入りたくないの問題以前に権利の問題だ。

その立場を踏まえた上で、日々の練習を再確認し、若い選手に促すべきことをしっかりと姿勢と言葉で伝えていこうと思う。

今日は17:00からYSCC横浜の最初の練習試合。

ワールドカップ決勝が行われたあのスタジアム…の横の人工芝(しんよこフットボールパーク)で試合です!!笑

みなさん、是非見に来てくださーい!!

 

関連記事