超高齢化社会に向けて必要なスポーツ健康施策とは?

2018.8.6

livest!編集部

超高齢化社会に向けて必要なスポーツ健康施策とは?

SPORTEC 2018を視察して感じたこと

livest!編集部

東京オリンピックを2年後に控える2018年夏、東京ビッグサイトで開催された日本最大のスポーツ・健康産業の総合展示会「スポルテック」。10回目となる今年は過去最大級の展示ブースと来場者で、世界的スポーツイベントを控えた国内のスポーツ界の盛り上がりを感じさせる展示会となった。

日本スポーツ産業の最前線を知る好機となったスポルテックを視察して感じた、超高齢化社会に突入する日本が取り組まなければならない健康施策の方向性とは?

SPORTEC 2018(スポルテック)

日本最大のスポーツ・健康産業総合展示会
2018年7月25日〜27日の3日間、東京ビッグサイトで開催

主催:SPORTEC実行委員会

共催:第27回ヘルス&フィットネスジャパン、第3回ウエルネスフードジャパン

熱気に包まれた10回目のスポルテック会場

日本最大のスポーツ・健康産業の総合展示会ということで、最終日となる27日(金曜)に東京ビッグサイトに向かう。
10時開場ということで少し前に最寄りの国際展示場駅に着いたのだが、想像以上にたくさんの人で電車内も駅付近も「通勤ラッシュ?」というくらい人で溢れていた。けれど、ビジネスマン風のスーツの人よりもマッチョな人やカジュアルな格好をしたグループや家族も多く、「この人たちはスポルテックではない別のイベントに向かっているのか?」と感じさせるくらいいつもの展示会とは違う雰囲気の人混みに飲まれながらビッグサイトへ。

ビッグサイト内では、10時開場に向けてすでに入場ゲート前がすごい行列になっていて、今までの展示会ではここまで入場前に並ぶことがなかったのでまたまた驚き。
今年のスポルテックは1階と4階フロアを使って、たくさんの企業ブースが展開されていて、短時間では回りきれないくらいの展示と人混みで、日本のスポーツ健康産業の盛り上がりを感じさせた。

「人生100年時代」に向けて「健康志向」の潮流

公式資料によると、政府はスポーツ産業を2015年の5.5兆円から2025年に15兆円に市場規模拡大しようとしているとのことで、「一億総スポーツ社会」というフレーズが書き込まれていた。
『LIFE SHIFT ――100年時代の人生戦略』の著者のリンダ・グラットンが説く「人生100年時代」というキーワードも記載されていて、これからは健康になることだけが目的でなく、健康であることは前提として、よく働き、よく学び、よく遊ぶことで快適なライフスタイルを実現させる生活スタイルをめざしていこうことらしい。「生涯現役」というフレーズも記載されていた。
医療面で健康をサポートするだけでなく、スポーツを日常的に楽しむことで健康体を維持するという、病院や自治体に頼る長寿ではなく、個々が自らの意思で生活スタイルを見直し、運動習慣を取り入れることで、今後の超高齢化社会となる日本を支えていく必要があるという認識をより浸透させたいという考えが公式資料のベースとなっていた。

会場内では、新製品のプロモーションや商談はもちろんだが、各種参加型イベントに参加するフィットネス愛好者の姿も目立った。彼ら彼女たちが最寄り駅から不思議に感じていたカジュアルな格好の人たちだった。ヨガやフィットネスエクササイズ、マシンを使った体験エクササイズなど、会場内の至る場所でフィットネスウェアに着替えた人たちが汗を流していて、ビッグサイトにわざわざ来るという健康への感度が高い人たちが増えているということが伺えた。

フィットネスマシンや健康器具、健康食品といったプロダクトの最新版やモデル版を紹介する企業ブースも数多く存在したが、IoTや情報解析サービスといった健康情報産業関連を商材とする企業ブースも目立った。また中国を筆頭に海外の企業や団体のブースが存在感を見せていて、日本のスポーツ産業の現在地と拡大の期待感が垣間見えてくる展示会となっていた。

ITを活かした効率良く効果的な健康習慣の啓蒙を

つい最近まで、「体を鍛える」「健康促進のための運動」をするとなれば、最新のマシンを使って優秀なトレーナーやインストラクターが指導することで健康をサポートするというやり方が主流だったが、現在は明らかな変革が起こっている。
現在の主流のスタイルは、その人の生体組成や栄養状態、睡眠や疲労はもちろん、DNAまでも数値化し、その数値を解析した上で、傾向を分類。その解析データを手元に置いて、そこからやっと人の手によるサービスを展開し始めるという流れが主流となっている。

振り返ってみると、これまでの運動理論は数少ないパターンに人を当てはめて運動量やメニューを作成していたが、人それぞれ本当に細かい特徴があり、数少ないパターンに当てはめるだけでは最適な指導をしきれないというのは、考えてみれば当然だった。例えば、昔は、部活動でトレーニングするとなると、体の大きい選手もまだ体が出来切っていない選手も平等に同じ数の同じ強度のトレーニングメニュー(例えば腕立て伏せなど)を行っていた。筋力のある選手にとっては楽過ぎるし、筋力が弱い選手にとっては強度が高すぎるメニューでも、全員同じ内容をすることが当たり前だった。
しかし、人それぞれ筋力も体調も(それこそDNAも)まったく違うのだから、同じメニューをするというのは非効率でしかない。しかし、非効率だとわかっていても、これまではベースとなる個人データを収集することができなかったので、運動メニューの最適化は難しかった。

今、(その検査方法がどこまで正確で、その数値がどこまで正確かという問題はさておき)かなりカジュアルに個人の細かいデータを出すことができる時代となった。
もちろん「一億総スポーツ社会」とか「生涯現役」というキャッチフレーズで運動習慣をつけることを促進することも大事だが、せっかく効率的な運動ができる環境が整いつつあるのだから、まずはパーソナルデータを自身で把握することを積極的にPRすることも重要なのではないだろうかと感じた。
国全体でパーソナルデータを出し、その膨大なデータベースをもとに傾向と対策を解析し、短い時間や労力で最短距離で健康的な運動を行う環境を提供することが、超高齢化社会となる日本国民全体の健康力アップにつながるのではと思う。

2018年、10回目のスポルテックを視察して、そんなことを感じながら帰路についた。