「こんな時だからこそ、サッカーができること」

2020.3.28

安彦考真

新規プロジェクトスタート!!第1回ライブ配信(2020年3月18日放送)

3月18日、現役Jリーガーが1つの新たなチャレンジを試みた。

スポーツを軸に、さまざまな社会の疑問や問題について、アスリート中心で語り合うネットライブ配信。

Y.S.C.C.横浜の安彦考真選手が発起人となり、各界で活動するエキスパートたちが力を合わせて番組を制作&放送を実現した。

第1回のゲストはY.S.C.C.横浜のシュタルフ監督。

海外でのサッカー経験や国際的な知識も豊富な知将が、今シーズンの目標について、そしてサッカー界を超えてもっと大きな日本の課題について、安彦考真選手と意見を交わした配信は、ほぼ告知無しの急遽の配信だったにも関わらず2000人以上の聴衆者を集めた。

まずは安彦考真選手がどのような意図で始めたのか、そして実現までの経緯について、余すことなく語ってくれた。

2020年3月18日の第1回配信について

安彦考真

コロナウィルスが蔓延し始めた2月末、学校が一斉休校になり、開幕を目前にしたJリーグも延期が決定した。

そのような時、僕も含めて多くの人が考えたと思う。「こんな時だからこそ、自分には何ができるのか」と。

 

僕は「『こんな時だからこそ、サッカーができること』というテーマでLIVE配信をしたい」と仲間に声をかけた。

すると声をかけたメンバーは即答で「やりましょう」と言ってくれた。数日後にはキックオフミーティングが開催され、事は一気に進み始めた。

 

僕が最初に提案したのは「現役Jリーガーを集めて『今こそ立ち上がれ! コロナに負けるなJリーグ』というテーマで語り合うYouTube配信がしたい」というものだった。

続けて、「これを第1回として配信を実現したら、単発で終わるのではなく『サッカー選手が本気で語る100年後の日本サッカー界』という目標を掲げたメディアに育てていき、継続してJリーガーが集まり語り合う場所にしたいと思っている」とも話した。

 

誰を呼んで、どう撮影するかなどすべてゼロからのスタートだったが、僕の思いに共感してくれた仲間たちが短時間で企画を実現するために動いてくれた。

かくして、第1回の撮影&配信ができる準備が整った。

 

僕が仲間に声をかけたのは3月5日。そして3月18日には生配信が実現した。

それぞれが公私にコロナウィルスの影響を受けているであろう厳しい状況の中、これほどの短期間でここまで形にしてくれたことに心から感謝したい。

 

仲間とともにいろいろ意見を出し合い、議論した結果、初回のゲストにはY.S.C.C.横浜のシュタルフ監督を招くことにした。

そして、彼と「こんな時だからこそサッカーができること」というテーマで語り合うという内容に決め、当日はMCを交えた対談形式で生配信をした。

「サッカーができることで世の中を元気にしたい」

たとえプレーができなくても「語る」ということでアスリートが持っているエネルギーを使って、ネガティブな自粛ムードにポジティブな活力を注ぎたい——今回のチャレンジの目的はそんな思いが強くあった。

そしてまた同時に、サッカーについて真剣に語り、Jリーグが再開したときには、また多くの人に応援してもらいたいという思いもあった。

 

現状、Jリーグはいつ再開できるかわからない。

そしてもし再開にこぎつけたとしても、サポーターの皆さんの生活環境の激変によって観客離れが起こるかも知れない。

このようなシリアスな状況で、さまざまな批判的な意見が投げかけられることも想像した。

しかし、そこを恐れるより、今だからこそできることにトライをして、サッカー選手がどう考え、どんな行動ができるかを示すべきだと決断した。

そして、せっかくのライブ配信ということで、Jリーガーについて普段はあまり語られることのない部分もお見せできればと考え、編集なしの生配信を選んだ。

シュタルフ監督には「Y.S.C.C.横浜が掲げる目標に対して、どんな取り組みをしているのか」という視点から今シーズンの目標を赤裸々に語ってもらった。

そして、僕自身はラストイヤーと決めた今シーズン、監督の要望にどうアジャストさせて「僕の現役サッカー人生の集大成を完結させるのか」を本音で語り合った。
熱い熱い75分間だった。

 

僕自身が意外な発見をできたことも多かった。

普段からシュタルフ監督をそばで見ているので、彼がどんな思いで取り組み、1つひとつの言葉の重みもちゃんと理解しているつもりでいた。しかし、いざ本音で語り合うと、すべてを理解し切ているわけではないということに気づかされた。

そして、監督として、プロフェッショナルな存在として、自分の中に「こうありたい」という理想像を作り、その理想像に恥じないよう自分を律し、挑む姿に感動さえした。

彼は、監督になるためにサッカー選手になったという。

そして、その目標の実現のために、世界各国のクラブを渡り歩き、契約するたびに「アカデミーの指導もさせてくれ」という条項を盛り込み、世界各国の子どもたちや指導者と触れてきたという。

こうした彼の考え方や行動は、アスリートや指導者を目指す者だけでなく、ビジネスマンのあり方にも通用する内容になっていたと思う。

 

そんな彼と、どうしても語りたいテーマがもう1つあった。

それは「なぜ他競技に比べてサッカー日本代表にはハーフ選手が目立たないのか?」という僕の素朴な疑問だ。

この疑問について、シュタルフ監督とともに、異なるルーツを持つ選手の存在意義や価値、そこにある弊害のついてお互いの考えをぶつけ合った。

日本は単一民族で単一言語、ハーフであってもどこか違う人種として認識してしまうことが無意識的に多い気がする。そういった僕ら日本人が無意識的に行なっている部分について、シュタルフ監督は自身の経験をもとに持論を語ってくれた。

彼の客観的な意見を聞くことで、僕が抱いていた問題が少しクリアになった。

ただし、それはあくまでもヨーロッパ人のハーフという視点ではあったので、南米などのハーフが感じている弊害はまた別にあるとも感じた。

 

今回、コロナをきっかけにスタートしたこの生配信だったが、僕にとってはネガティブな状況をポジティブに変えていく非常に有意義な時間となった。

そんな思いが、この配信を通してより多くの人に届き、ありきたりだがこの国難を「one team」という仲間への犠牲を厭わないチームワークで乗り越えていきたいと願っている。

そのために、この配信はこれからも継続していく。

最後に、今シーズンが最後となる僕だが、ピッチ内の貢献はもちろんだが、アスリートにできることはそこだけではないと改めて感じている。

ここから様々な活動を一つひとつ形にしていくので、是非今シーズンの僕の動向をピッチ内外共に楽しみにしていてください!!

次回もお楽しみに!!