〝甲子園の魔物〟は実在するのか?大舞台で実力を発揮できる人とは?

2018.8.18

livest!編集部

本当に甲子園に魔物は住んでいるのか?勝負の舞台で実力を発揮できる人、できない人

記念すべき第100回となる夏の全国高校野球選手権が今年も甲子園球場で開催されている。

これまでの長い歴史の中でさまざまな名勝負や名場面があり、たくさんの伝説が生まれた甲子園。この地は高校野球児の永遠の憧れの夢舞台であり、時に予想外の出来事が起きるために〝魔物が住む〟と言われている。

オリンピックでも、絶対王者が敗れたり、大本命のチームの鉄壁の守備が突如乱れるなど、甲子園と同様に予想外のことが多々起こり、そのたびメディアは〝魔物〟のせいにする。

しかし、夢の大舞台でたびたび生まれる、その予想外のプレーや大逆転につながるエラーは本当に魔物が引き起こしているのだろうか?

日本と中国で長くアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)を指導し、国際舞台で数々のメダルを獲得した井村雅代コーチは著書の中で「オリンピックに魔物は住んでいない」と断言する。そして「実力通りにいかない理由」も分析している。

「大舞台で実力を発揮できない」のは何もスポーツの世界だけのことではない。アラサー&アラフォー世代のビジネスパーソンにとって、重要なプレゼンの場や昇格試験などで、綿密に行ったはずの準備が本番につながらなかったという経験は誰にでもあるだろう。

勝負の場で実力をしっかり発揮するためには、どういう思考を持つべきか? カリスマコーチの著書からそのヒントを探る。

井村雅代コーチの主な世界大会のメダル受賞

・1984年ロサンゼルス五輪(元好三和子・木村さえ子組)デュエット種目銅メダル
・1988年ソウル五輪(小谷実可子・田中京組)デュエット種目銅メダル
・1992年バルセロナ五輪(奥野史子)ソロ種目銅メダル
・1996年アトランタ五輪(8人制)銅メダル
・2000年シドニー五輪(立花美哉・武田美保組&チーム種目)銀メダル
・2001年世界選手権福岡大会(立花・武田組)デュエット種目金メダル※日本初
・2004年アテネ五輪(立花・武田組デュエット種目&チーム種目)銀メダル
・2008年北京五輪※中国代表(チーム種目)銅メダル
・2012年ロンドン五輪※中国代表(デュエット種目)銅メダル、(チーム種目)銀メダル
・2015年世界選手権カザン大会※日本代表(乾友紀子・三井梨紗子組テクニカルルーティン、チーム種目テクニカルルーティン&フリールーティン&フリーコンビネーション)銅メダル
・2016年リオデジャネイロ五輪(乾・三井組デュエット種目&チーム種目)銅メダル

井村雅代コーチの著書より抜粋

84年ロス五輪からオリンピックで8大会連続、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)でメダルを獲得している井村コーチ。その指導は時に昭和的な側面も覗かせるが、それでも毎回選手が入れ替わる中、4年ごとに開催されるオリンピックで8大会連続でメダルを獲得させるというのは、並大抵の指導力ではないことは間違いない。

しかもこの間、日本代表だけでなく中国代表を率いて2大会でメダルを獲得しているという点で、彼女の指導法は日本に限ったものではなく、グローバルスタンダードであることを証明している。

そんな井村コーチの指導の真髄を、著書の中から抜粋。日の丸をつけてプレーすることを夢見るアスリートだけでなく、大きな挑戦の真っ只中のビジネスパーソンにも参考になる言葉ばかりだ。

 

「何が何でもやる」と決めて、できるまでやり続ける。

目標を立て、そこに到達するまでの計画を立てても、計画通りにはいかずに徐々に遅れていくことも多いと思う。
重要なのは、ここでどうするか。
ここで「まだ時間はある」とか「後で頑張ればなんとかなる」などと考えたら、100パーセント目標を達成することはできない。

「何が何でもやる」と決めて、できるまでやり続ける。1日でも早く帳尻が合うように、それまでの何倍も練習しなければならないのだ。
なかなかチェックポイントをクリアできない時は焦りも出てくる。しかし、焦らないとダメ。焦って必死に努力して初めて、どうにかチェックポイントをクリアできるのだ。

 

結果を出すことは苦しいことではない

結果を出すことを求められたら、「これは面白ことなんだ。楽しいことなんだ」と思えなければならない。
「これは面白いチャレンジなんだ」と受け止められれば、自ずと結果はついてくる。
壁を感じたら、「自分は試されている」と思う。試されている、それでも受けて立ってやる、という気持ちを持てば人生も楽しくなる。

 

できないわけがない。なぜならできるまでやるから

シンクロが一糸乱れず演技できるのは、「合うまで練習するから」。できないわけがない、なぜなら「できるまでやる」から。できる人間が寝ている間に、できない自分が寝ていたらダメ。

 

チームのレベルは一番上の人に合わせる

コーチの仕事は、いかにしてその「最高レベルの1人」を生み出すか。
最高レベルの1人には見本がない。見本がない中で、いかに新しいスキルを身につけさせるか、もう一段高いレベルに引っ張り上げられるか。それこそがコーチの仕事だ。

チームメンバーの力量はバラバラ。では「誰に合わせるのか?」
平均に合わせるのではなく、一番高いレベルの人に合わせる。高さが一番、スピードが一番、ジャンプが一番、それぞれの一番に合わせる。平均に合わせると平均以上の選手は手を抜かなければならない。真剣勝負で1人でも手を抜いていれば絶対に勝てない。

この1番の人のレベルを引き上げるのがコーチの仕事、リーダーの仕事。

 

 

オリンピックに魔物は住んでいない

本番で結果を出せない人は、奇跡を願っている。
練習で100回やって1回できたものを一発勝負の本番で出そうと思っても、そんな奇跡は起こらない。練習で100回中99回できていても、本番でできない1回が出てしまう。それが勝負の世界だ。
「緊張して力が出せなかった」「練習通りの力が出せなかった」という選手がいるが、それは奇跡を願っているからだ。やることをやらないで、奇跡を望むから緊張するし、練習通りにできないのだ。
本番では、その場に立つまでにどれだけのことをしてきたかが、自分を支えてくれる。本番までにやるべきことをやりきった人は別に緊張することはないし、怖いものはない。それが勝負で結果を出すための唯一の方法なのだ。

 

「井村雅代コーチの結果を出す力」あと1ミリの努力で限界を超える

PHP研究所/2016年9月27日発売

井村雅代

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