筋トレする前に知っておくべき5つのこと【その5】

2019.3.6

livest!編集部

「メディアの情報に流され過ぎないこと」地味な王道を歩むことが成功の第一歩

 

勝つために身体を鍛える

筋トレする前に知っておくべき5つのこと

 

スポーツ選手にとって、競技の質を高め、試合に勝つために筋力アップは重要だ。

特に中学が高校で部活をしている選手や、趣味でランニングなどを行っているアマチュア選手に、筋トレに取り組む前に知っておいてほしい「5つのヒント」を紹介する企画。

最終回は、「楽して簡単に引き締まった体になる」ことは可能か?

トップアスリートでない限り、学生でも社会人でも運動以外の活動時間の方が多い人が普通だ。
ユニフォームやスポーツウェア以外の服を着ても「カッコ良く見られたい」と思うことは当然だろう。
「細マッチョ」と呼ばれるような引き締まった身体になりたい人向けの筋トレはあるのだろうか?
また「●●だけダイエット」のように簡単に楽してボディメイクできる方法は本当にあるのか?
趣味でスポーツをする人や見た目重視のトレーニングをする人に、ボディメイクの実際を教える。

 

【その5】

理想のボディメイク実現のために知っておくべきこと

 

「引き締まった筋肉」というものはない

 

テレビや本、インターネットなどで「肉体改造」「ボディメイク」といったフレーズを目にすることが増えた。
身体のラインを気にする女性たちのトレンドが、「ダイエットでただ痩せる」から「鍛えてカッコいいボディラインになる」に方向転換し始めたことも、「ボディメイク」ブームに拍車をかけているのかもしれない。

男性でも「細マッチョになりたい」という願望を持つ人も少なくない。
「ボディメイクはしたいけれど、筋トレでボディビルダーのようにはなりたくない」「大きな筋肉はいらない、引き締まった筋肉が欲しい」とスポーツトレーナーにリクエストする人も増えているという。
しかし、スポーツ医学的に「引き締まった筋肉」という筋肉の分類はない。筋肉は鍛えることで大きくなるが、筋肉が引き締まるという捉え方はできないのだ。

ボディメイクとは一般的に考えて、「筋肉と脂肪の量とその割合を変えること」で「その人が理想とするカッコいい身体の形に近づける」ことだと言える。
ただ極端な食事制限をして痩せるのでもなく、有酸素運動で脂肪を燃焼させるだけでもなく、ある程度の筋トレは必須となる。
つまり、理想のボディメイクを実現したければ、筋トレをして筋肉を大きくすると同時に、運動や食事管理によって脂肪量を減らして、イメージに沿うボディラインを作り上げていくしかない。

ボディメイク的に考えれば、筋肉には単に大きいか小さいかと言う基準があるのみで、この点においては脂肪と同じだ。
例えば、筋肉量が同じであれば脂肪の量が少ないほど引き締まって見える。そして脂肪の量が同一の場合は、ある程度筋肉が大きい方が引き締まって見える。筋肉量と脂肪量の比率を改善することによって、体にメリハリが生まれるためだ。

アスリートのための筋トレも、ボディメイクのための筋トレも、トレーニング部位の筋肉を大きくすることが主目的であることは同じだ。だから、競技者の筋トレと同様に、少ない労力で効率よく筋肥大を狙うアプローチが最も効果的なやり方だ。
「細マッチョになりたい」「体を大きくしたいわけじゃない」といって、わざわざ効率の悪いトレーニング方法を採用するのはナンセンスだ。「筋肉を極端に大きくはしたくない」のであれば、効率の良い方法を少ない量(頻度、時間)で採用すれば良いだけの話だ。

 

楽して簡単に「理想のボディメイク実現」は可能か?

 

最近、メディアなどでさまざまなトレーニング法が紹介されることが増えた。
その中でも、特に話題にのぼることが増えたのが「体幹トレーニング」というフレーズだ。

この「体幹トレーニング」、じつはもともと腰痛治療のために考えられたトレーニング法。
腰痛の予防、軽減には体幹を固めることが大事であると始まったが、その後、腰痛患者だけではなく、アスリートにも効果があるだろうとアメリカで行われ始めたことで、日本でも火がついた。
最近はさまざまな体幹トレーニングが紹介されているが、じつはアスリートを含めたほとんどの人に必要な体幹トレーニングは、スタンダードなトレーニングでもじゅうぶんなのだ。
多くの人がイメージする体幹トレーニングはもともとリハビリの発想から来たもので、場合によっては必要だが、アスリートのパフォーマンス向上のメインのトレーニングはならないというのが実情なのだ。

トレーニングの王道は30年前の時点で既に確立されていると言える。今、誰もが知っているようなオーソドックスなトレーニングで、理想のボディメイクは実現可能なのだ。
それ以外の体幹トレーニングやファンクショナルトレーニング等は、あくまでも+ αの要素と言える。ところが近年は、+ αばかりが取り沙汰され、王道がないがしろにされる傾向にある。
理想のボディメイクを実現するためには、話題の情報に流されず、地味で当たり前のトレーニングを正しく継続することがもっとも近道なのだ。

 

 

 

 

参考図書

「使える筋肉・使えない筋肉 アスリートのための筋力トレーニングバイブル」

ナツメ社 (2018年11月発行)

著 :谷本道哉(近畿大学生物理工学部准教授)

荒川裕志(国際武道大学体育学部准教授)

監修:石井直方(東京大学大学院総合文化研究科教授)

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