話題性よりエビデンスを重視した健康志向をめざそう

2019.1.28

livest!編集部

「思い込み情報」での健康志向で逆効果な生活習慣を送っていませんか?

健康的な身体を手に入れる

「メディアから学ぶ」

「日本人の体質研究でわかった長寿の習慣」

奥田昌子

 

話題性よりエビデンスを重視した健康志向をめざそう

「平均寿命」や「平均余命」の定義を正しく説明できる人がどれくらいいるだろう。

話題の「地中海食」はどんな人に効果が出やすいのか?

私たちが普段テレビやネットで見かける健康情報は、健康志向の高まりとともに増加の一途を辿っている。

その洪水のような情報量を私たちはとても取捨選択しきれないので、無意識に話題性や極端な情報が頭に残りがちとなる。メディアも興味を持ってもらうため、クリックしてもらうため、どんどんキャッチーで意外性のある情報を取り上げようとする。

ワイドショーや情報番組で紹介された食材や商品が次の日、スーパーの棚から消えてしまうというというのは、私たちが健康情報を望む一方で、健康志向のベースを他人任せにしてしまっている末路ともいえる。

 

「日本人の体質研究でわかった長寿の習慣」の著者である奥田昌子さんは京都大学博士であり、予防医学を研究し、健康診断や人間ドック実施機関で20万人以上もの診察実績を持つ内科医(本の著者紹介より)。

この本で奥田先生は、病気になりづらい健康習慣について、私たちがうろ覚えのまま実践してしまいがちなトピックをエビデンスをもとに解説してくれている。

例えば、私たちはぼんやりと「江戸時代の人は現代よりかなり短命だった」と思い込んでいる。それは「江戸時代の平均寿命は約30歳」という情報を曖昧に記憶しているからだが、実際は成人した人に絞ると平均寿命は約60歳となる。

当時は生後すぐの死亡率が今より高いために平均寿命を極端に下げていたためで、医学が今ほど発達していなかった江戸時代でも、成人できれば60歳前後まで生きる人が多かったようだ。

そんな私たち日本人は世界的に見ても長寿国と言えるが、その理由の1つに和食が挙げられる。しかし、奥田先生はこの本の中で、本当にバランスの良い和食は1980年頃の食事で、現代の私たち日本人の食事のバランスは当時と比べて崩れていると解説する。

また長寿の人が多いと言われる地中海でよく食されるオリーブオイルやワイン、魚介類などを中心とした「地中海食」が身体に良いとメディアで紹介されることも多いが、研究によって世界中の誰にでも効果的かどうかははっきりと証明できないと奥田先生は解説する。

その理由を奥田先生は、体質や民族ごとに腸内環境が異なり、地中海食に適しているわけではない腸内環境の人が地中海食中心の食生活に変えても、大きな効果が得られないと言う。やはり日本人には日本人の腸内環境に適した和食中心がもっとも効果的とのこと。

 

「●●だけダイエット」や著名人が紹介する「●●健康法」は、特に食や栄養に関する情報はエビデンスが不足していたり、極端に加工された情報の場合が少なくない。

手軽に取り入れても一時期は効果が出るかもしれないが、本当に体が健康的になっているかわからないし、極端過ぎて持続させることが難しい場合もある。

特に40代の身体は、これまで酷使し続けてきたぶん、かなりバランスが悪くなってしまっている。

だからこそ極端なやり方で手っ取り早く健康になろうと思わず、エビデンスのしっかりしている情報を優先して、長い目で地道に取り組むことが結果的には一番の近道だと言える。

気になるキーワード

・江戸時代の平均寿命は約30歳だが、成人した人に絞ると約60歳となる

 

・「平均寿命」とは死亡率が今後も変わらないとした時、その年に生まれた子が何歳まで生きられるか、という未来の話

 

・「平均余命」とは現在の私たちが平均して何歳まで生きられるかの見込み

 

・「理想の和食」は1980年(昭和55年)頃の和食

 

・平均寿命と健康寿命の差、つまり「不健康な期間」は男性が約9年、女性が約12年(2016年厚労省のデータ)

 

・2017年時点で日本に100歳以上は6万8000人近くもいる

 

・分析を総合すると、日本の高齢者の体は20年で7、8歳若返っているといえる

 

・血液中のブドウ糖は細胞に入ってエネルギー源になり、余った分は肝臓と筋肉に貯蔵される。この時、約80%が筋肉に入るので、筋肉量が多ければそれだけたくさんブドウ糖を取り込むことができ、血糖値が下がる。カロリー制限などで筋肉が少なくなると、余分なブドウ糖を筋肉に取り込めなくなって血糖値の高い状態が続く

 

・日野原重明先生の1日の食事は、朝食は飲み物数種類、昼食はミルクとクッキー、夕食は茶碗半分のご飯とたっぷりの野菜に加えてヒレ肉を週2回、魚を週5回

 

・血糖値が高いと老化が進む

 

・「糖化」とは、体内の余分な糖がタンパク質と結びつく現象

 

・糖化によってできる物質(「AGE」糖化最終生成物=老化物質)が外見の老化を招き、動脈硬化、白内障、アルツハイマー型認知症を進行させる恐れがある

 

・血液中の余分なブドウ糖が全身の血管と神経を障害する

 

・カナダ出身の近代医学の礎を築いたウィリアム・オスラー博士曰く「人は血管とともに老いる」

 

・「ゴースト血管」とは、毛細血管が崩れた状態

 

・毛細血管のゴースト化は40代から始まり、60代になると皮膚の毛細血管が20代の半分近くまで減少する

 

・ゴースト化の問題は、酸素や栄養が届かなくなるために臓器の機能が低下すること

 

・「地中海食」中心の食習慣は世界中の誰でも良いというわけでない。体質、民族ごとの腸内細菌叢の違いで効果が大きく異なる

 

・腸内環境は人種によって大きく異なる。日本人は善玉菌が多く腸内環境がきれい。日本に近いのは、オーストリア、フランス、スウェーデン。一方、同じアジアでも中国はアメリカに近く、デンマーク、スペイン、ロシアと似ている

 

・「サルコペニア」とは、筋力低下のこと。サルコ=筋肉、ペニア=失われる

 

・「ロコモ」とは、筋力とバランス能力の低下を指す

 

「日本人の体質研究でわかった長寿の習慣」

奥田昌子

青春新書インテリジェンス(2018年10月発行)

 

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