満開の桜を見てあなたは何を思い出しますか?

2019.4.6

livest!編集部

始まりの季節。数年後、今年の桜はどんな記憶とともに蘇るだろうか。

人生を哲学的に見つめ、日々考えたことや感じたこと、学び、体験についての思いをまとめ、書き留める「人生哲学研究家」のブログ。

編集長ブログ
2019年4月6日

満開の桜を見てあなたは何を思い出しますか?

休日のカフェはゆったりとした気持ちになれる。
同じ店でも戦闘状態のビジネスパーソンたちが発する緊張感で満ちた平日とは時間の流れが違って感じるのはなぜだろう。
カフェの前には桜並木。道ゆく人たちがみな顔を上げる。晴れた空の下、ピンクで染まった木々がちょうど今見ごろのようだ。

店内にはさまざまな人がいる。
これからお出かけに行くのであろう親子や新学期直前の高校生。就職活動の準備をする大学生。そして休日の午前をコーヒーを飲んでゆったりと休日を過ごすオフモードのビジネスパーソンたち。
隣に座る親子の会話の中に偶然にも母校の大学名がたまたま耳に入る。もしかすると遠い後輩になるのかもしれない。少し緊張した面持ちに20年前の自分の心境が微かに蘇る。

春本番。今年の桜は一段と美しいように感じる。
開花後にほとんど雨が降らなかったからか、それとも見る側の心境に別の理由があるためか。
入学や進学、そして心機一転。この時期の日本人の営みの背景に不思議と桜はよく似合う。同じカフェに偶然居合わせた人たちそれぞれに今限りの春がやって来ている。

桜を見ると美しいと感じるのはなぜだろうか?

その可憐で薄いピンクの花びらたちが短い命を一斉に花開かせるその姿自身の美しさはもちろんだが、その桜の姿に重ね合わせてさまざまな記憶を蘇らせてしまうからなのかもしれない。
子どもの頃ももちろん桜の美しさに目を奪われたが、年齢を重ねるごとに桜の美しさが心に沁みるのはその眩しい光景が何層にも重ねられた深みを感じるからだろうか。

人間がピンクと認識している桜の花びらも別の動物や昆虫がみるとまったく違う色として認識しているという。光の反射で認識する色が動物や昆虫によって違うとすれば、そもそも桜自身は本当は何色をしているのだろうか。
人間が赤色を見て危険を感じたり興奮するように、もしかするとそれぞれの動物や昆虫にとって桜がどんな存在かによって見え方が変わってくるのかもしれない。

学生時代、20代。毎年桜は違って見えた。それはその時の自身の環境や心境が常に大きく変化し続けていたからか。
だとすれば30代、40代。桜を見上げた感想が去年との開花の違いしかないとしたら自分の環境や心境に前向きな変化が少ないからかもしれない。

同じカフェの店内にはさまざまな年齢や環境の人たちで満ちている。それはまるで自身の人生の軌跡を模しているようにも見える。
窓の外に満開の花びらに覆われた木々たち。店内にいるすべての客が見ている桜は同じ桜でも、それぞれの年齢や現在地、環境によって目の前の桜の記憶は千差万別となる。
高校生の時代に見た桜。大学生の時に感じた桜。そして社会人となったばかりの頃に見上げた桜。どれも同じ桜でも同じ桜は二度とはないように、今年の桜も人生の中でたった一度きりだ。
数年後、今年見た桜が忘れられない人生の分岐点として記憶されているか。それとも毎年同じで区別がつかないか。
少し強い風が吹き、桜の花びらが澄んだ青空にパッと舞った。

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