テレビ朝日「激レアさん」出演で僕が学んだこと

2020.7.27

livest!編集部

安彦考真「人生の先輩から20代に向けてのリアルアンサー」19

テレビ朝日「激レアさん」出演で僕が学んだこと

地上波テレビ人気番組制作の裏側と出演者たちの高いプロ意識について

安彦考真

2020年7月27日

 

テレビ朝日の人気番組「激レアさんを連れてきた」7月18日放送回にゲストとして出演した。

放送中からメールやLINEの受信サインが鳴り止まず、放送後もしばらくの間ずっと大勢の人から見た感想や激励のメッセージをたくさんいただいた。

この反響は出演が決定した時に僕が想像していた何倍も何十倍も大きなものだった。改めて地上波テレビの影響力の大きさを実感し続けた1週間だった。

10日ほど経った今、「人気のテレビ番組」のパワーの大きさと怖さを実感している。

オファーをもらったのは6月下旬だった。そこから3週間ほどで放送日を迎えたこの番組出演。

最初の取材は電話で2時間半ほど。

基本的には今まで受けてきた新聞や雑誌などと同じで、僕がなぜJリーガーになろうとしたのか、その挑戦の過程や経過についてを詳しく聞くというものだった。

その後、何度か細かいやり取りは随時あったものの、そもそもこの時点ではあくまで取材候補の1人で、企画会議を経て僕の出演企画が採用されるかどうかはまったくわからなかった。

 

じつは以前にも、NHKの人気番組「逆転人生」からも同様のオファーがあった。

その時も今回と同じように、この時点ではあくまで採用候補の1人ということで、担当ディレクターの人が企画会議に向けての事前取材をしてくれた。

この時の結果は不採用。

「逆転人生」という番組のコンセプトと合わなかったのか、他に何か理由があったのかはわからないが、こういったこともあるのだと経験はしていた。

だから、今回の「激レアさんを連れてきた」も同じように不採用の可能性はじゅうぶんにあると考えながら取材を受けていた。

 

しかし、今回は違った。

担当ディレクターから改めて電話が入り、そこで彼はこういった。

「アビコさんで1時間やれそうです」と。

 

その時、僕は素直に嬉しかった。

それは単にテレビに出れるということではなく「僕の人生」が何らかの役に立てると感じたからだ。

その後も何度か確認の電話が入りつつ、そのたびに台本がバージョンアップされ、どんどん1時間の番組用の台本として完成していった。

その間、たった1週間。最初の電話取材からたった1週間で収録日がやってきた。僕はそのスピード感に、毎週放送する番組を作り続けている制作スタッフの方の体内時計が驚異的な速さで進んでいることを知った。

収録日。テレビ朝日に入ると、すぐに軽い台本打ち合わせを終えると、そのままリハーサルが始まった。

このリハーサルに、実際の出演者であるオードリー若林正恭さんや霜降り明星のせいやさん、女優の羽田美智子さんは参加しない。

ただ、弘中綾香アナウンサーだけはリハーサルにも参加した。

 

この日の収録は3本取りだったので、弘中アナウンサーはそのすべてのリハーサルと本番に参加していたことになる。

リハーサルだけでも1時間以上の時間を費やし、頭から最後まで通しでやり切る。しかも、常に満面の笑顔のまま、ほぼ本番と変わらないテンションでやり続けている弘中アナウンサーのプロ魂を目の当たりにして、僕はひたすら「すごい!」と圧倒され続けた。

加えて、テレビで放送される際に映し出されるあの独特なタッチの絵とボードに貼るきれいな字は、すべて弘中アナウンサー自身がすべて1人で書いているということもこの時に知った。

彼女の仕事量がハンパないこと、その中でも一切クオリティを落とさないプロ魂に感動すらした。

リハーサルが終わると、いよいよ本番の収録となった。

本番収録は2時間を超えた。

カメラが回り始めたら一度も止まることなく最後まで走り切ることになる。

初めて地上波テレビに出演するにもかかわらず、僕の話だけで1時間分の放送回にするのだ。リハーサルを済ませていたとはいえ、収録直前まで密かにプレッシャーを感じていた。

しかし、実際に始まってみると、若林さんが熟練のトークでうまく番組の空気を作っていき、バラエティ番組の収録が初めての僕がなじみやすいよう、自然に笑いが起こるようにさりげなく場を温めていってくれた。

そこにせいやさんが自身のキャラを活かしつつ、若林さんが作り上げたその空気にうまく乗っかり、独特の言い回しで笑いを重ねていく。

 

さらに、いい感じで出来上がった空気を一気に壊すような羽田さんが時折凄まじい破壊力の天然トークを打ち込み、番組収録は終始爆笑の連続だった。

その中で、ずっと笑顔で進行を務める弘中アナウンサーが、さりげなく番組の方向性を調整する舵を取っているので、若林さんやせいやさんが笑いに走っても、羽田さんが破壊力抜群の発言をしても、最初に決められたゴールに向けての流れは乱れることはなかった。

 

僕は番組が進行していく中で、自分なりに場の空気を読んでセリフや仕草、表情などを台本に外れない範囲でアドリブで対応した。

しかし、テレビ慣れしている人たちに囲まれて収録しているうちに、この人たちや制作スタッフが僕にどんなキャラを期待し、どんな言動を求めているかが伝わってきて、僕も自然とその場に馴染んで受け答えすることができた。

収録中、僕が目にしていたのは、彼ら彼女たちのプロフェッショナルたちの上質な仕事ぶりだった。

そして、人気バラエティ番組が作り上げられる過程を、ゲスト席という一番の特等席で気持ちよく堪能することができた。

僕は自分がこれまでやってきたことに対して一切の後ろめたさを感じたことがなかった。

だから、若林さんやせいやさんがどんな無茶振りをしてきても、どんな厳しい言葉を投げかけてきても、すべて堂々と答える姿勢を貫こうと決めていた。

変に謙遜したり、恥ずかしがったりするのではなく、自分がまるでヒーローインタビューを受けているつもりでその場に挑もうと事前に決めて臨んでいた。

そんな僕のスタンスを察知し、若林さんが台本にはなかった「勝利者インタビュー」という言葉をアドリブで使ってツッコんでくれた。

 

制作スタッフは僕がヒーローインタビューのようなたち振る舞いをするなど誰も事前に想定していなかったのに、若林さんはそれを瞬時に察知し、ワンフレーズでドンピシャの表現をして笑いに変えていた。

第一線で活躍する人は、素人のアドリブの言動に対しても、瞬時に把握し、どう料理すれば笑いに変えられるかを考え、すべてエンターテインメントに変える力があるということを身をもって知った。

僕は一流の人の凄さを間近で感じることができた。

そして、あっという間だった収録から、番組放送まで2週間。

どんな内容になって放送されるか、僕にはまったく知らされなかった。

不安がなかったわけではなかった。しかし、実際の放送を家のテレビで見て、僕はテレビの素晴らしさを再認識した。

収録もとても楽しかったけれど、実際の放送はその何倍も面白い内容になっていたのは本当に凄かった。

 

しかし、僕は同時にテレビの怖さも知った。

影響力がある分、そのイメージはそのまま定着する。テレビに出続ける人はその一度定着したキャラを演じ続けなければいけなくなる。

そこに出てくる本来の自分との乖離。これは真面目な人ほど苦しめられるのではないかと感じた。

僕の場合は、ほぼありのままの自分だったから演じることもなかったけれど、演じたキャラクターであり続けるのは、真面目な人や繊細なタイプはどこかで精神崩壊してしまってもおかしくないと感じた。

 

だからこそ、僕らは自分の興味や好奇心の延長上で自分をブランディングすることが大事なのではないか。

そこには相当な時間と労力が必要だ。

誰もが生きたいように生きれる。ただし、そこには相当な覚悟と努力が必要になる。

「激レアさんを連れてきた」の出演は、セルフプロデュースの難しさと大切さを一流にタレントさんと制作スタッフさんから学べた貴重な機会だった。

一度しかない人生にちゃんと時間をかけて、自分を生きたいと思えた。

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