組織間の共通言語を持つことの重要性

2019.9.20

安彦考真

安彦考真のリアルアンサー「J3リーグ第23節を終えて」2019年9月15日

9月15日、パナソニックスタジアム吹田にてJ3リーグ第23節が行われ、Y.S.C.C.横浜はガンバ大阪U-23相手に1-0で勝利。4月以来の連勝を飾るとともに、今シーズン初めて2試合続けての無失点で勝ち点を重ねた。

この試合、本来は攻撃的な選手であるリンジェ・ジャブラニ・アリ選手をセンターバックに起用するという果敢な挑戦に出たYS横浜。しかし新たなDFラインが相手の攻撃を見事に無失点に収め、「勝っている時はいじらない」の鉄則を覆して連勝を果たした。

チームメイトたちがピッチで躍動する中、懸命なリハビリによってケガによる休養期間を予定より早く終え、徐々にチーム練習に参加し初めている安彦考真選手は、この試合もピッチの外から試合を見た。

少し離れた位置から自チームを、スポーツディレクター目線で見た感想はどうだったのか? 今回も自チームの戦いぶりを安彦考真選手が独自の捉え方で解説してくれた。

リアルアンサー

2019年9月16日

 

Y.S.C.C.横浜

安彦考真

チームとしての骨格ができた時、選手の活躍の幅がより広がっていく

先週の3-0勝利に続き1-0の勝利。2試合連続のクリーンシートは偶然じゃない。

本来センターバックの柱である宗近慧がケガで出れないという苦しいチーム事情だったが、その穴を埋めたのはなんとFW登録のジャブ(ジャブラニ)だった。

前節はシン(進昴平)が出場停止でレン(古山蓮)がその穴を埋めた。今節のジャブのDF起用と同様にこれらは偶然ではない。

練習の中でジャブをディフェンスで試し始めた時は、チームメイトのDF陣ですら半信半疑だったはずだ。しかしシュタルフはそれを実行し、見事に結果で示した。

シュタルフ監督には優れた戦術眼と同時に、選手個々のストロングポイントを見抜く目も持ち合わせていることを、この試合で改めて証明したと言えるだろう。

YSCCのサッカーは共通言語を元に、瞬時にチームメイト間だけ通じる〝コトバ〟を交わしながら攻撃が始まる。

「ビルドアップとは何か」「それはどこから始まるのか」など、我々はこういった問いに対して全員同じ答えを持っている。選手同士がそういった共通言語を元にピッチ上で会話する。この〝コトバ〟がこのチームにとって連携や連動と呼ばれる根っこなのだ。

世の中が「アイコンタクト」と呼ぶものが我々にとって〝コトバ〟である。長いシーズンを戦い、試合を重ねるにつれてそのコミュニケーションにはズレがなくなり、徐々に心地良ささえ生まれている。

しかし、そんな〝コトバ〟を心地良いレベルにまで密に交わすことができるようになるのは、選手個々の相当な努力と何かしらのパンチ力が必要だと僕は考える。

YSCCはほぼ全選手がバイトをしているので、日々の練習時間が限られる。またプレシーズンにチームの一体感を育むキャンプができるわけでもないし、練習後にみんなが集まれる時間があるわけでもない。だから、この〝コトバ〟をちゃんと交わすことができるようになるまでに、ここまで時間がかかってしまったのはある意味必然なのかもしれない。

だが、YSCCはやっとシュタルフがイメージする「戦う集団」となりつつある。さぁ、ここからが総合力の戦いだ。

今日の勝利でポジション争いはさらに激化した。今まで一見すると選手を固定して使っているようで、実際は多くの選手を新しく試してきたシュタルフ監督。これからも多くの選手が試され、さまざまなポジション変更が見られるだろう。そしてその日々の微調整の積み重ねが、よりシュタルフの理想に近いチーム像に集約していくはずだ。それはこの2試合が物語っている。

毎日がオーディションと化す戦いを、僕たち選手は最後まで生き残れるかどうか。

一人も欠けることなく、最後まで〝コトバ〟を交わし、YSCCのサッカーを多くの人に楽しんでもらおうじゃないか。

選手たちよ、最高の勝利をありがとう!

そして、勝利の余韻とともに、大阪から8時間かけてバスで帰ってくる君たちに同情します(笑)

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