41歳プロデビューで感じたリアルな世界

2019.3.20

安彦考真

リアルな体験談を共有することで彼の挑戦の意味をより深く知ることができる

41歳で念願だったプロリーグ公式戦デビューを果たしたY.S.C.C.横浜の安彦考真選手。

3月10日の開幕戦で途中出場したが、次節の初のアウェー戦ではユニフォームを着ることなくベンチで敗戦を告げるホイッスルを聞いた。

セレッソ大阪U-23との試合は、41歳のオールドルーキーにとって前日からすでに戦いが始まっていた。

8時間のバス移動での試合前日の大阪入り。そして同じ道程を8時間かけて戻り、翌朝の練習試合に挑んだ安彦選手は今までに感じたことのない心身の疲労感を覚えたという。

華やかなスポットライトを浴びる、憧れの存在であるJリーガーたち。その陰でJ3の選手たちは過酷な環境の中、試合に臨んでいる。安彦選手はそんな自身の体験を赤裸々に教えてくれた。

それは「挑戦」「夢の実現」という言葉の裏にある真実を知ってもらいたい、自己体験を共有することで自身の挑戦の参考にしてほしいという思いからだ。

 

リアルアンサー

2019年3月19日

安彦考真

第2節、初のアウェー戦を終えて

開幕から2連敗。
大阪からの帰路は精神的にも肉体的にも非常に厳しいものだった。

スポーツ界に「タラレバ」は存在しない。それは僕も理解している。
しかし現実はそんな簡単に語れるものではない。

大阪までの移動はバス。
移動時間は8時間。

ブラジルでプレー経験のある僕でさえ、この8時間移動がどれだけ大変なのかを十二分に理解できていなかった。

バスの中でストレッチをしたり、水分を多めに取ったりと工夫を重ねるが、そのたびにトイレに行きたくなる。

 

コンディショニングを保たせようよ思えば、そのぶん違うことでストレスを感じる。

とはいえ、この現状にクレームを出すわけにはいかない。

変えたければそれなりの結果を示していくことが必要だからだ。

悔しいが僕にはまだその結果がない。

 

僕は試合に出場することはできなかったが、試合前のウォーミングアップでは身体の重さを感じていたことは事実である。

試合に出場していたメンバーは年齢に関係なく苦しい状態であったことは明白だ。

もちろんこれは批判やクレームといった低レベルの話ではなく、事実を事実として書くことで、この状況下をどう乗り越え改善していくかをポイントにしている。

 

試合は0-1の負け。

開幕2連敗である。

新しいチームには勝利が必要だ。

僕は翌日の練習試合に全てを注ぎ込むつもりで帰りのバス移動や帰宅後の睡眠時間などを逆算した。

たかが練習試合と思う人もいるかも知れないが、僕らリザーブの選手にとってはこの練習試合で120%のパフォーマンスをしなければ、スタメンのチャンスなんてやってこない。

コンディショニング云々をほざくより、リーグ戦同様のパフォーマンスを出せるかどうかを考えることが重要なんだ。

 

大阪からの戻りももちろん8時間。

食事はサービスエリアで自分たちで取る。

こんな時に細かく栄養のことを考えたら「摂取できなストレス」に苛まれることになる。

自分の好きなものを食べて、できるだけストレスを感じさせないようにする。

何故なら、バス移動だけでも相当な負荷を脳と身体にかけているからだ。

 

横浜に到着したのが深夜0時。

そこから自家用車で自宅に戻ったのが深夜1時。

翌朝10時キックオフの練習試合のために、
睡眠を取るか、ケアを取るか少し悩んだが、朝起きたときの不快感を避けたかったので、ケアよりも睡眠を選択した。

 

翌朝6時の起床はそこまできついものではなかった。

ここからは脳をいかに騙せるかというところがポイントとなる。

身体が疲れているのは明白だ。

41歳という年齢も理由の一つだ。
(あまり年齢のせいにはしたくないけど事実だw)

だからこそ練習試合へのモチベーションを一気に奮い立たせる必要があった。

 

試合までジュビロ磐田の川又選手のプレーを見続けゴールのイメージを自分のプレーとリンクさせる。

脳内は今まさに川又だか安彦だか分からない状態にまで仕上げている。

試合会場に到着した最後の仕上げは、"天使の手のひら"を持つYSCC横浜のチーフトレーナーに全身のケアをしてもらう。

脳内は川又経由安彦行きが整い、身体は天使の手のひらが"反応&反射"に備えサポートしてくれた。

あとはやれるとこまでやり切る勝者のメンタリティーがあればいける。

結果は左足を振り抜き魂のゴールを決めて勝利。

そこから身体が一切動かなくなった。

 

練習試合後2日間のオフが与えられたが1日目はほぼ何も食べずに寝続けた。

消化する作業すらその時も僕にとってはストレスだったんだ。

常識や科学でははかれない現実がある。

それを「なんとなく」にするのではなく、自分の直感と目指すべき目的に向かい、トライを繰り返す。

 

世間一般の常識にとらわれると自分に何が合っているのかわからなくなる。

そもそも栄養学は一般的すぎて、極端に偏った生活を送っているアスリートには適用しないことだってある。

自分で自分を感じない限り、自分の脳を安心させることなんてできない。

オフ2日目は朝からちゃんとご飯を食べ、ケアをしてもらい、今ノーマルな状態に戻ってきた。

 

さぁ、今週は初勝利を目指し八戸と試合だ。

大阪での経験を活かし、今ある最良の状態で試合に向けて準備をしていく。

これぞ正に実験結果の検証とアップデートである。

 

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