僕が挑戦し続ける本当の意味

2019.7.9

安彦考真

安彦考真のリアルアンサー「J3リーグ第15節を終えて」2019年7月9日


J3リーグ第15節、Y.S.C.C.横浜 vs. ロアッソ熊本の試合は、7月7日にニッパツ三ツ沢球技場で行われ2-2の引き分けとなった。

J3で首位を走るロアッソ熊本に対してYS横浜は積極的に立ち向かい、自慢の攻撃力で一時は逆転したが、直後に同点ゴールを決められた。

試合終了間際、勝ち越しゴールを託されて途中交代で出場した安彦考真選手だったが得点はならず。
首位チームに負けず、勝ち点を奪ったという結果は悪くないが、安彦選手の試合終了後は悔しさばかりが残ったという。

「なぜ結果を出せないのか?」
試合を終えて改めて自身を振り返ってみたという安彦選手だったが、そこで忘れかけていた大事なことに気づいたという。

Jリーガーとして戦う40歳の男が、悔しさの果てに考え抜いた思考の過程と結論を語った。

リアルアンサー

2019年7月9日

Y.S.C.C.横浜

安彦考真

「いつの間にか見失っていた大切なこと」

「今日こそはゴールを決める!」
試合前からそう意気込んで臨んだロアッソ熊本との試合だった。

シュタルフ監督が試合前に選手に対して発した熱い檄。「最後まで諦めない」という監督からの言葉を選手全員が心に刻み、ハードワークを繰り返した。

首位チーム相手に試合は一進一退、2-2という同点の場面。アディショナルタイム含めても残り時間は約15分というタイミングで、監督から勝ち越しゴールを託されて僕はピッチに送り込まれた。

チームメイトは誰も諦めていなかった。番狂わせまであと少しのところ、最終コーナーで戦い抜いた仲間からバトンを渡された。
チームからもサポーターからも、ホームスタジアムを歓喜に染めるゴールを期待されていたし、なにより僕自身が一番期待していた。
「今日こそはゴールを決める」その一心でボールを追い続けた。

限られた時間の中で持てる力を出し切った。それは断言できる。けれど、結果的にチームを勝利に導くゴールは決めることができなかった。

首位チームに負けなかった。勝ち点を奪えた。チームとしては悪くない結果でも、個人的には「悔しさ」しか残らなかった。
「ゴールを決める」その決意を実行できなかったことが、今も悔しいし、情けなくも感じる。

今までの僕ならきっと翌日からの練習でもっと自分をもっと追い込もうとしただろう。試合で感じた悔しさを「ピッチ上」だけで晴らそうとしていただろう。
けれど、今回はがむしゃらに走り始める前に一度冷静になって考えてみた。

「I am loser」
振り返ってみれば、僕は常に「敗者」だった。
ブラジルに行った10代の時から、僕は特に何も成しえていないし、何も手にしていないままだった。

だからこそ結果を渇望する自分がいる。
Jリーガーとなった今、その気持ちがより一層自分の体中に充満している。何がなんでもゴールを決めたい、結果を出したい。その気持ちが常に僕を縛っている。

でも、本当に重要なのは結果を求めることなのだろうか。
自分にとって本当に重要なことは、この苦しい現実に挑み続けることなのではないか。結果はあくまでその副産物なのではないか。

挑戦し続けることこそ、僕の人生そのものだ。
そして、僕にとって挑戦とは過去の自分と決別することでもある。

僕の人生にとって常に本当に必要なことは挑戦し続けることのみ。「成功したか失敗したか」という「過去」という名の結果に一喜一憂することではない。

40歳でJリーガーになった男がどこまでこの醜態をさらけ出し、戦い続けられるのか。
その戦う理由は何なのか。
僕が自分の人生をもって表現したいことは何かを成し遂げたかどうかの「結果」ではなく、挑戦し続けるその姿勢そのものだ。

結果や記録を意識し過ぎると、僕の挑戦の本質を見失う。
僕は何故今この挑戦をしているのか。どんなに情けなくても、どんなにバッシングされても、なぜ僕は挑み続けるのか。

ゴールを決めることを追求し続けることによって、自分にとってもっとも大事なことを見失いつつあった。一度冷静になって自分を見つめ直すことで、そのことに気づくことができた。

目標にしていたJリーガーになれた。だからこそJリーガーとして結果を出すことにこだわった。
その過程で少し自分の人生の本質を見失っていた自分がいた。

でも、僕が本当に追求すべきは挑戦し続けること。そして「自分の人生」を表現し続けること。
その過程の中で初ゴールもきっと生まれるだろう。

記録や記憶を求めず、ただひたすら今を色濃く生きる。そこにあるのは僕の生き様だ。

もっと自分に忠実に、本能に耳を澄ませて行動を起こす。
本業"安彦考真"を120%で生き抜くこと、それこそが僕の人生の本質なのだ。

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