筋トレする前に知っておくべき5つのこと【その2】

2019.2.26

livest!編集部

「トレーニングの回数=努力の証」という発想はもう古い

勝つために身体を鍛える

筋トレする前に知っておくべき5つのこと

 

スポーツ選手にとって、競技の質を高め、試合に勝つために筋力アップは重要だ。

特に中学が高校で部活をしている選手や、趣味でランニングなどを行っているアマチュア選手に、実際に筋トレに取り組む前に知っておいてほしい「5つのヒント」を紹介する企画。

2回目は、「サッカーのロナウド選手の見事な腹筋は毎日腹筋トレを3000回やっている成果」という都市伝説について考える。

本当にたくさんやればやるほど筋トレは効果が上がるのだろうか?

 

 

【その2】

「ロナウドが腹筋3000回やっている」のは本当か?

 

今シーズンからイタリアの名門クラブであるユベントスでプレーするサッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウド。

34歳となった今もまったく衰えを見せることなく、今シーズンも新天地でゴールを量産しているロナウド選手。鍛え抜かれた筋肉は、サッカー選手という枠組みを超えた肉体の究極美を感じさせるほど。

そんなロナウド選手が「毎日3000回腹筋を行なっている」という都市伝説が一時期まことしやかに広まった。

彼の見事に割れたシックスパックを見ればまったくのデタラメとも思えないほどだが、本人はその興味深い伝説を笑って否定した。

実際には1日200~300回程度の腹筋運動を、週に4~5日程度のペースで行なっているらしい。

3000回と比べれば桁が1つ少なくなったが、それでも1日100回以上の腹筋を行なっているというロナウド選手。だからこそアラフォーを目前にしても、若い頃と変わらないきたえぬかれた肉体を維持できているのだろう。

しかし、アスリートとして世界トップクラスの彼のトレーニングは、彼だからこそ効果があると考えるべき。私たちが筋トレをする際は、回数にこだわることはむしろ非効率であり、避けるべきトレーニング法なのだ。

「トレーニングの回数=努力の証」という考え方はもう古い

「たくさん腹筋をすればロナウド選手のようなすごい筋肉になれる」

そんな回数への幻想を持つ人は多い。特に学生スポーツに取り組む若い世代は、回数をこなす体力があり、回数がわかりやすい評価指標となるため、よりその傾向が強いかもしれない。

そんな土壌の上に、ロナウド選手の見事な腹筋=トレーニングの回数の成果とする話が出てくるとも言える。

トレーニングの回数をたくさんするは決して悪いことではない。

しかし、効率という面を重要視した時、その神話は崩れてしまう。

というのも、「回数をこなせる」というのは、結局それだけそのトレーニングの負荷が低いということ。

筋力トレーニングの本来の目的は、「筋力アップという目的に対する大きな効果を効率よく得る」ためのもの。筋力増強が真の目的の場合、本来は精一杯頑張って10回できるレベルのトレーニング内容がもっとも効率的なのだ。

腹筋3000回やろうと思えばそれなりに時間がかかる。であれば、その時間を腹筋だけでなく他の部位の筋肉も鍛えることで、より早く理想の肉体に近づけ、筋トレ以外の実践練習にも時間を有効に使うことの方が本来の目的に適しているのは間違いない。

腹筋を毎日何百回もするというのは、一般的に言えば、時間がかかる割にトレーニング効率が著しく悪いのだ。

ロナウド選手ほどのトップアスリートなら、そんなことは百も承知だろう。もしかすると、毎日200~300回しているという発言もリップサービスだった可能性さえあると考えられる。

他の筋トレと同じく腹筋も自重だけでは非効率

ロナウド選手のような見事に6つに割れた腹筋は、誰もが憧れるものだ。

しかし、アスリートがその見た目に憧れて筋力トレーニングすることは、プレーの向上や勝利に近づくというプレイヤーの目標からすればとても非効率だ。

アスリートを指導するトレーナーから見れば、競技の際の重要度に比べて、普段の筋力トレーニングへの意識が不足していると感じるのが「体幹動作筋」と「股関節動作筋」だという。

その「体幹動作筋」と「股関節動作筋」の代表格が「腹筋」と呼ばれる腰回りの筋肉たちだ。

体幹動作筋の筋トレとして、誰もがまず思いつくのが腹筋トレーニングだが、たいていは自重負荷で行われる。

腕まわりや足の筋肉を鍛える際は必ずバーベルなどを使って強い負荷をかけながらトレーニングを行う人も、なぜか腹筋トレーニングだけは自重のみで行うという人も少なくない。

しかし、腹筋も腕や足の筋肉と同じ筋肉なので、本来は同じように強い負荷をかけて鍛えなければ強化されない筋肉だ。

ロナウド選手のように何百回腹筋トレーニングをするのではなく、重りを使って強い負荷をかけた腹筋トレーニングを短時間行うことが、もっとも効果的な腹筋の鍛え方だということを意識して、筋トレメニューを見直してみてほしい。

 

 

 

参考図書

「使える筋肉・使えない筋肉 アスリートのための筋力トレーニングバイブル」

ナツメ社 (2018年11月発行)

著 :谷本道哉(近畿大学生物理工学部准教授)

荒川裕志(国際武道大学体育学部准教授)

監修:石井直方(東京大学大学院総合文化研究科教授)

関連記事