これは数年後の日本の予知夢?

2026.1.12

livest!編集部

見出し画像

 【映画感想】「香港時代革命」

2019年から2020年にかけて香港で起こった抗議デモの模様を、日本人である佐藤充則監督が捉えたドキュメント映画。

「東京ドキュメンタリー映画祭2023」の長編部門でグランプリを受賞したのが、佐藤監督の『香港時代革命』(2022年製作)だった。

2年後の今回、8回目となる同映画祭で再び同部門に選出された佐藤監督の『紅線 Red Line』(2024年製作)が「その後の香港」を捉えた作品ということもあって、『紅線』と合わせて『香港時代革命』が特別上映された。

 

『紅線 Red Line』が中国政府による香港完全統制となる「国家安全維持条例」成立後の香港を映し出しているのに対し、この『香港時代革命』はその前段階、徐々に統制が強化されていく過程を追っているのが特徴。

共産党に支配されていく香港の未来を憂う若者たちが、抗議デモを通じて自分たちの考えを主張するのに対し、中国による統制を歓迎する人たちは暴徒化する若者たちの抗議活動を批判する。

さまざまな主張が異なる層が対立し合い、香港の市民が分断されていく中、警察による厳しい取り締まりによって、中国政府の統制が、静かに、ただし確実に進められていく様子は、今の日本人とってはとても他人事には思えなかった。

画像

誰もが自分の考えを明確にし、抗議デモとして行動に移す姿勢は日本人にはないものだ。
しかし、立場を明確にすることで、家族や友人間で悲しい分断が次々と生まれていくということを今回の映画で目の当たりにした。

インタビューに答える人の多くが考えの異なる家族と「冷たい関係」に陥っていると苦笑する様子を見るにつけ、「正解のない問い」にどんどん胸が苦しくなってくる。

画像

この映画で映し出された「市民の分断」の姿が、もしかすると数十年後、数年後の日本と重なることを想像するだけで恐ろしくなってくる。

非常に考えさせられることの多い意義深い映画でした。

画像

上映後には、同映画を佐藤監督とともに製作した平野愛監督と、阿古智子・東京大学教授による中国返還後の香港の変遷と、厳しい言論統制が敷かれている香港の現状のお話が聞けた。

お二人が懸念していたのは、こういう大きな出来事も、言論統制が厳しい社会では、時間の経過とともに記録も記憶も失われていくということ。

映画に顔出し&実名で登場した香港人の取材陣たちのほとんどが、逮捕の危険を感じて海外に移住しているという。

そして、映画に登場した若きフリーメディアの男性は、抗議デモにかかわったことで就職することができず、現在も日雇い労働しながら香港の実情を発信し続けているという。

画像
阿古智子・東京大学教授(左)と平野愛監督(右)

この日、平野愛監督は、故・佐藤充則監督が香港での取材時に着用していたTシャツを着てきていた。

胸に書かれている記号のような8つの文字らしきものは、「香港時代革命」をデザイン化したもの。

今の香港では「香港時代革命」という文字を示すだけで逮捕される可能性があるからだと、平野監督は言う。

「私たちは日本人なので、最悪、今後中華圏には入国できないくらいだが、香港に住む人は逮捕され、その後どうなるかは政府の匙加減次第。
恐怖で人々の言動や思想を封じる政策がどんどん浸透している今の香港の姿を、ぜひ遺したいという思いで映画を製作しています」

この2つの映画は当然、中国圏では上映できない。

中国本土や香港では、こうした過去の出来事はどんどん消し去られていく。
だからこそ、日本でしっかり記録し、記憶を残しておくことが大事だと、お二人は口を揃えて訴えていたのが非常に印象的でした。

画像
画像