「食」で肉体は蘇る!40代Jリーガーの体質改善物語(第14回)
「食」で肉体は蘇る!40歳Jリーガーの体質改善ストーリー
これまでの連載記事
第1回→ http://www.livest.net/real/4827.html
第2回→ http://www.livest.net/real/4833.html
第3回→ http://www.livest.net/real/4864.html
第4回→ http://www.livest.net/real/4900.html
第5回→ http://www.livest.net/real/4907.html
第6回→ http://www.livest.net/real/4937.html
第7回→ http://www.livest.net/real/4944.html
第8回→ http://www.livest.net/real/4955.html
第9回→ http://www.livest.net/real/4963.html
第10回→ http://www.livest.net/real/4973.html
第11回→ http://www.livest.net/beauty/4976.html
第12回→ http://www.livest.net/beauty/5302.html
第13回→ http://www.livest.net/beauty/5315.html
第14回
42歳Jリーガーによる「食事改善の最終結論」
安彦考真
ほとんどのプロサッカークラブは栄養士と契約している。
常に優勝争いをするようなトップクラブであれば専属の栄養士がクラブに常駐しているし、そうでなくてもほとんどのクラブは専門知識や経験が豊富な栄養士と契約し、選手に提供する食事に関して細かく管理するようにしている。
一般的に「栄養士」というけれど、資格の面で見れば2種類ある。
厚生労働大臣指定の栄養士養成施設を卒業し、都道府県の知事が認定する免許を有するのが「栄養士」。
一方、国家資格の試験を合格することで厚生労働省大臣が認定する国家資格を有するのが「管理栄養士」。より高度な知識や技能を備えた栄養のプロと言える。
資格取得の難易度で言えば当然、国家資格である管理栄養士となるが、僕自身、各クラブの栄養士さんの実情をすべて把握しているわけではないので、ここではすべて「栄養士」と書く。
栄養士はみな専門知識を持ったプロフェッショナルだ。
当たり前だが資格を有し、豊富な経験に基づいたアドバイスを行なってくれるだけでなく、日々更新される新しい知識や情報を常に取り入れる姿勢を持っている人たちがほとんどだ。
プロとしての意識も高く、選手たちにより良い環境を提供しようとする熱意には頭が下がる思いだ。
彼ら彼女たちは胸を張って言うだろう。
「栄養学も進化している。私の知識も合わせて変化している」と。
しかし、実際にファスティングを経験したことで、あえて僕はこう思う。
「それはあくまで自分たちが若い頃から勉強してきた一本道の範囲内での〝変化〟であり、そもそもの固定観念を覆した上での〝進化〟ではないのではないのだろうか」と。
多くの選手たちも同様だ。
今の選手たちは本当に勉強熱心で、健康面や食事の面などへの意識が高い選手が多い。
最近はさまざまなアレルギー検査などが開発・提供されていて、自分の体質チェックやどんな食事がいいかなどのアドバイスを自費で専門の会社と契約している選手も増えている。
しかし残念なことに、ほとんどの場合、その努力は大きな改善に繋がっていないことが多いように僕には見える。
それはなぜか。
それは凝り固まった昔からの固定観念の中から思考が抜け出ることができず、既知の範囲内で新しいものを見つけようとしているからではないかと僕は考える。
いろんなことを試し、たくさん時間やお金もかけても、結局は古い固定観念の範囲内での微調整レベルの改善しかできていないのではないか。
期待以上の劇的な効果を得ようと思ったら、古い固定観念を突き抜け、今まで想像もしなかったやり方で、思い切ったチャレンジをしなければ無理だ。
古い固定観念とは、究極には子ども時代に無意識に植え付けられた「古いバージョンの常識」で形成されている。しかも古いだけでなく、現代の最新医学から見れば間違った考え方でさえあったりもする。
そんな危なっかしい「古い固定観念」という土台の上で、いくらお金や時間をかけて新しい大きな家を建てようと思っても、イメージ通りにうまくいくことはない。
それがファスティングに挑戦し、ヴィーガンを取り入れた僕の結論だ。
僕がヴィーガンに食事方法を変えると決めた時も、周囲の選手たちなどから多くの疑問を投げかけられた。
「食事はバランス。極端は良くない、バランスが大事だ」
そんな言葉を耳にタコができるくらい言われた。
しかし、僕はそんな時、取りあえす相手の話を聞くフリをしながら、心の中では強く疑問に感じた。
「そもそも『バランスが良い』って何?」「何を持ってバランスが良いと言っているのか?」
もちろん「バランスなんて知ったことではない、偏ったものが良いんだ!」ということではない。
僕が言いたいのは、誰かに言われたままにやるのではなく、自分にとって何が重要で、自分の身体はどんなサインを出しているかを、真剣な気持ちで耳を澄まして聞いてみることが大事だということだ。
ヴィーガンに変えてから、身体からの声はこれまでにないほどはっきり聞こえるようになった。
それに加えて、計測できる数値や排出物の状態といった物理的に分析可能なものから得た情報にもより敏感になった。
尿の色、便の形や匂い。
自分が何を食べ、どう消化しているかなどを知るには非常に重要な〝証拠物〟となる。
僕は今まで以上に、そういった体が排出するものに対しても、より詳しくより厳密にチェックするようになった。
その結果、その日の体調に最適な練習メニューを想定できるようになっていった。
例えば「強めの自主トレをしてもいい日」「筋トレをしてもいい日」など、チームから与えられる練習メニューではなく、自分のその時の体調に最適なトレーニングを自分で考え、実行できるようになったのだ。
改めて考えてみれば、プロアスリートがトレーナーや指導者「にいつ筋トレをすればいいか」「自主トレをしたほうがいいのか?」と聞くのは、おかしなことではないだろうか。
もちろん自分よりも専門的知識を有し、経験も重ねているプロフェッショナルの言うことを参考にすることは重要だ。
しかし、それはあくまでアドバイスとして聞くべきものだ。
自分の身体のことなのに、自分で感じ、分析し、考えることなく、管理を他人任せにしてしまうことはプロアスリートとしてあるまじき行為だと、今の僕なら断言できる。
いくら国家資格を持っているプロフェッショナルとはいえ、所属するすべての選手のことを完璧に把握することは不可能だ。
しかも、どんなに時間をかけても、栄養士にとって僕の身体は結局は他人の身体だ。僕の身体のすべてを把握できるわけはない。
チームの栄養士のことは、もちろん人間としては非常にリスペクトしているが、彼ら彼女たちからの助言は、残念ながらあくまで定説に即したアドバイスでしかない。
それより、自身で自分身体の声に耳を澄まし、理解することができれば、毎日のトレーニングや食事のスケジュール計画について、確な根拠を持って自分で作成することができる。
これこそが真のプロフェッショナルの姿勢ではないかと僕は思う。
『ゲームチェンジャー』(Netflixより)
さらに、ファスティングとヴィーガンを経て、僕は自分の「身体の疲労」と「脳の疲労」をはっきりと区別して捉えられるようになった。
これも、僕の中では非常に大きな変化だった。
今までは身体が疲労していると脳も同じだけ疲れてしまい、練習後に「深い思考」をすることができなかった。
しかし、今、僕が本業であるサッカー以外に「毎日のインスタライブ」や「移民問題」「スポーツメンター」「食事改善」の研究、また「ゼロ円先生」や(今は自粛しているが)さまざまな場所での「講演会・トークショー」、そして「クラウドファンディング」をはじめさまざまなビジネスなど、多種多様なことに同時並行で取り組めている。
また、このlivest!をはじめさまざまなメディアでの執筆活動、SNSの更新なども数も質もアスリートの枠から飛び抜けているという自負がある。
それは、自分の信念や理想がより明確になり、そこに向かうルートがはっきり見えているということも大きいけれど、食事の変化による、疲労コントロールができているからなのは間違いない。
確かに42歳の身体はプロの練習を毎日120%真剣に全力で取り組むことで疲労困憊となる。
けれど、「身体の疲労」とは別に「脳の疲労」を把握し、自らコントロールすることで、数多くの新規プロジェクトを同時並行で進め、たくさんのビジネスを展開できている。
そんな事実を見るだけでも、食事に関する取り組みが生み出す結果を大きく左右するということを理解してもらえるはずだ。
科学的なアプローチで研究している専門家による理論は他にもたくさんあるだろう。
しかし、それはあくまで自分ではない誰か別の人が研究した結果でしかない。
自分の身体にとって最善な取り組みは、自分自身で見出すしかない。それは多くの人が見て見ぬふりをしているけれど、紛れもない事実だ。
しかし、僕が紹介するまでもないけれど、あえて参考にしてもらいたいのは、ネットフリックスが提供する「ゲームチェンジャー」という映画だ。
興味のある方は下さい是非。
最後に、現在菜食主義に近い食生活に変えていると言われている選手の中で、絶対的な結果を出し続けているスーパーアスリートを紹介して終わりにしたい。
リオネル・メッシ
所属クラブ:バルセロナ
サッカー界の頂点に君臨する男も、菜食主義を貫くことで自身のコンディションを整えているようだ。彼が多くの激しいディフェンスに遭いながらもほとんどケガに悩まされないのは、彼の食生活が要因の1つかもしれない。(安彦)