リアルアンサー
2018年7月30日の質問
ジーコの16年ぶりの日本サッカー界復帰が示すこと
ジーコが16年ぶりに鹿島アントラーズに復帰し、テクニカルディレクターに就任しました。
日本サッカー界の飛躍のキーパーソンの1人であるジーコ氏がこのタイミングで鹿島に復帰したことは、さまざまな理由があると思います。
ジーコ氏やジーコ氏の兄であるエドゥ氏と親交が深い安彦選手に質問です。
ジーコ氏が日本サッカー界に与えた影響について、特に重要だと感じていることについて、過去のジーコ氏とのエピソードも交えつつ教えてください。
またイニエスタ選手やトーレス選手といった世界的名選手がJリーグ入りしたこの時期、16年ぶりに日本サッカー界に復帰したその意味や効果など、Jリーガーとしてどのように考えるか教えてください。
安彦考真のリアルアンサー
世界のレジェンドたちが今、日本に集結しているという僥倖を活かさない手はない
僕は、1999年から2003年までジーコ氏の実兄であるエドゥ氏と、選手兼コーチ兼通訳として仕事を一緒にしていました。
その期間でジーコ氏とも6度程お会いさせていただき、通訳もさせてもらいました。
(初回から5回目まで毎回「初めまして」って言われていましたが…笑)
これは多くの方々が知っているジーコスピリットだと思いますが、彼を語る上で外せない言葉でもあるのでここに記載しておきます。
「献身・誠実・尊重」
今でもこの3つは鹿島アントラーズのユニホームにも印字されていることでも有名です。
ジーコ氏によって与えられたもっとも大きな影響は、「プロフェッショナルとは何か」ということを日本サッカー界に植えつけたことだと僕は思っています。
90年代、日本リーグというアマチュアからJリーグというプロリーグに変わったことで、大きく環境が変化しました。
それは年俸なども含めて、生活環境からステイタスまで、あらゆる面で見られ方も変わりました。
その中でジーコ氏が植え付けたプロフェッショナルの定義はとても大きいと思います。
「お金をもらうことはプロの価値証明ではあるが、人間の価値証明ではない」、そうエドゥからよく聞かされていました。
ピッチ内での価値は金額で示されるが、ピッチ外の価値は金額以外で示されると……。
それがジーコ氏が植え付けたプロフェッショナルということだと思います。
鹿島アントラーズで掲げた「ジーコスピリット」は社会で生きる上でも必要不可欠な要素であるということです。
イニエスタ選手やトーレス選手が加入した2018年。ジーコ氏も日本サッカー界に復帰しました。
この巡り合わせを偶然ととらえるのではなく、日本サッカー界が本当のプロフェッショナル集団になるためのきっかけとして次世代に受け継ぐ必要があると思います。
世界のトップオブトップの現役選手と世界から尊敬される人格者でもあるレジェンドがこの日本に同時に存在することなど、中々ないことです。
もしかすると、来年にはいないことだって、この世界ではあり得ます。
だから僕は、ジーコ氏とイニエスタ選手、トーレス選手に、これからの日本サッカー界が目指すべき場所と具体的なアクションプランなどを聞けるプロジェクトをスタートさせることを、ぜひJリーグに提案したいと思います。
欧州や南米との違いは散々いろいろな方がいろいろな場所で言ってこられましたが、実際に経験しているトップ選手が感じる「未来」を具体的に話してもらえる場所があれば、そこに大きなヒントが生まれ、トライ&エラーを繰り返せる環境が作れるはずだと思います。
ジーコ氏は「鹿島」、イニエスタ選手は「神戸」、トーレス選手は「鳥栖」で括ってしまっては発展はない。
今、よりオープンに意見交換ができるプロジェクトを立ち上げるチャンスだと思う。
ダボス会議のスポーツ版「スポーツダボス会議」を開催して、日本サッカーだけでなくアジアも含めた今後の発展を話し合える場作りたい。
水戸はコンベンションなど数多くの会議が行われることでも有名なので、市長に提案して「水戸ホーリーホック」主導で開催するのも一つのアイディアではないだろうか。
とにかく、これだけの世界のスーパースターをそのままにするのではなく、融合させ発展させ、今一「日本サッカー」を考える最高の機会にできたらと考えます。