存在理由を表現できなければ価値がない

2019.4.15

安彦考真

安彦考真のリアルアンサー「J3リーグ第6節を終えて」2019年4月15日

4月14日、J3リーグ第6節「福島ユナイテッドFC 対 Y.S.C.C.横浜」戦が福島のホーム「とうほう・みんなのスタジアム」で開催された。

試合開始早々の得点から優位に立ったYS横浜は、試合終了間際にも試合を決定づける2ゴールを重ねて3 - 0で快勝。この試合前までホームでの2連戦を無得点で連敗していたYS横浜だったが一転、自分たちのやりたいサッカーを少しずつ取り戻せたと試合後、安彦考真選手は安堵の声を発した。

雰囲気の悪い連敗の後、この試合に向けて安彦考真選手は一体どんな気持ちで練習に臨んだのか?

連敗後にチームメイトと話し合ったこと、そしてこの試合に挑む際の思いを安彦考真選手がリアルアンサーしてくれました。

リアルアンサー

2019年4月15日

安彦考真

Y.S.C.C.横浜

存在理由をピッチで表現できなければ価値がない

快勝!
結果だけ見ればそう言える試合だ。しかし内容は快勝と言えるほどあっさり勝利したわけではなかった。

福島は10番を起点にゲームコントロールをして非常にボール回しのうまいチーム。サイドにも能力のある選手がいる。簡単に勝てる相手ではないことは試合前から全員が想定していた。

僕らは5失点と2失点して2連敗中。しかもどちらも無得点で、福島にとってはカモにしやすい相手だったはずだった。

「このままではいけない」

群馬戦に敗れてから、僕らはもう一度原点に立ち返ることにした。

「自分たちがやってきたことは何か」「このメンバーでしかわからないことは何か」
それはペップに聞こうがモウリーニョに聞こうが絶対に答えは返って来ないだろう。その答えを知っているのは間違いなく僕ら自身である。こういうときこそ、選手間での細かいコミュニケーションが必要となる。

誰が何をすることで何が起きるのか。それは誰と誰がコミュニケーションを取ればいいのか。その場合はどのリズムで動き出すのか。
本当に細かいところだが、ここには僕らでなければ通じない共通言語がある。

完敗した群馬戦翌日の練習試合でそれを確かめ合い、その後の練習でそれを実践した。チーム全体で原点に立ち戻れた福島戦は確かな手応えを持って挑んだ試合だった。

僕を含め昨年までJリーグキャップ数0の選手が多く占めている我々はまだまだ何者でもない。

経験の浅いサッカー選手が一番気になる視線はファンやサポーターではなく、じつは同業種である選手たちの目だ。
どんなにしっかりとした準備をして試合に臨んでも、経験が浅い選手は同業者たちの目を意識し過ぎて簡単に自分を見失うことがある。だからこそ僕らだけが持つ共通言語の徹底が必須になると考えた。

ある選手が試合後に「アビさんのお陰だよ。ありがとう」と声をかけてくれた。
それは僕が完敗したガンバ大阪U-23戦後に選手を集めて伝えた一言が響いたからとのことだった。

ホームで5失点という悔しい敗戦をそのままにしておくことはできず試合直後、僕の想いをいくつか選手に伝えた。

その中でリザーブ選手の心構えを話した。

試合が始まれば監督はほぼ何もできない。その中で自分の意思を伝えることできるのは選手交代くらいだ。

いわば選手交代はメッセージだ。途中で入る選手は毎回変わる。それは試合の状況に合わせて監督のメッセージが違うからだ。

僕は選手にこう伝えた。
「途中出場の選手がもっと自分が入った意味を積極的に表現しないとだめだ。中で戦っている選手は苦しんでいる。それを助けるために入ったんだからもっと自分のできることに120%になって存在感を出さないと意味がない」と。

いつもスタメンだった選手が控えに回った福島戦。その選手は途中出場した際、僕の言葉を胸に素晴らしいパフォーマンスをしてくれた。
彼の献身的なプレーがスイッチとなり、そこから2点目が入り、3点目が入って試合は決まった。

福島戦は、選手全員が立ち返る場所を見つけることができたと同時に、自分の役割を120%で全うするというプロフェッショナル意識が選手の中に徐々に芽生えてきていると感じた試合となった。

もしかすると今シーズンのYSにとって大きなターニングポイントとなるかもしれない重要な一戦となった。

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