「スポーツプロボノサポーター」とはいったいどんな取り組みなのか?
リアルアンサー
2019年2月5日の質問
遅咲きJリーガーの新たな挑戦の真意と未来図とは?
今シーズンからY.S.C.C横浜に移籍した安彦考真選手。昨シーズン、ゼロ円契約でJ2の水戸ホーリーホックに加入した40歳ルーキーとして強烈なインパクトを残した安彦選手だったが、今シーズンはプレシーズンから新たなチームでまた奇想天外な取り組みをスタートさせた。
安彦考真選手が命名した「スポーツプロボノサポーター」という取り組み。これまでJリーグでは誰もチャンレジしたことのないまったく新しいプロジェクトについて、どんな経緯で始めようと思ったのか? この取り組みをきっかけとした将来的な目標は? など、この取り組みに安彦選手が込めた考えについて答えてもらいました。
安彦考真選手のリアルアンサー
「スポーツプロボノサポーター」という取り組みに込めた思い
まず初めにこの「スポーツプロボノサポーター」を始めようと思った経緯からお話します。
僕はJリーガーになる前、サッカーに携わる多くの仕事をしていました。
その中で、スポーツを通して社会に貢献できることは無いだろうかとぼんやり考えていた5年ほど前、僕が尊敬している「人の人生を変えるプロ」だと思っているある人に「プロボノって知ってますか?」と聞かれました。
僕は即答で「知らない」と答えたのを今でも鮮明に覚えています。
話を聞くとアメリカなどで弁護士団体が始めた社会貢献のことを「プロボノ」と呼ぶと教えてもらいました。
※編集部注
プロボノとはラテン語で「公共善のために」を意味する pro bono publico で、最初は弁護士など法律に携わる職業の人々が無報酬で行う、ボランティアの公益事業あるいは公益の法律家活動を指した。弁護士による無料法律相談、無料弁護活動などが含まれる。現在も弁護士の業界において、もっとも浸透している。
彼は続けて僕にこう言いました。
このプロボノの方式をスポーツ界でもやりたいと。
ずっとスポーツを通して社会貢献をしたいと思っていた僕にとっては「YES」以外の答えを見つけることができませんでした。
「スポーツプロボノ」との出会いはそこからです。
それから数年間いくつか「スポーツプロボノ」のイベントを開催してきましたが、その当時の僕はまだまだ声にパワーがなく、そこまで大きく発展させることができませんでした。
それから2年の月日が経ち、人生で大きなチャレンジに成功した僕だからできることがあるはずだと考えるようになりました。
今回の「スポーツプロボノサポーター」(通称:「SPS」)はスパイクというアイテムを使い、お互いのできることで、相手に必要なことを補完し合うシステムです。
このSPSはクラウドファンディングでJリーガーを目指すときに感じた「乗船」や「共犯」のような、共に何かをしたいというパワーを逃さずことなく一つのエネルギーとして集合体にしたいと考えた結果です。
出航する船を港で見送る「応援」から、出航する船に乗船する「支援」に変えることで、エネルギーは一つとなり、そこには想いという無形の等価交換が存在すると思ったのです。
スパイクをメーカーからもらうことはもはや20世紀のやり方であって、そもそも本田選手や長友選手クラスでない限り、広告効果などは見込めません。
メーカーからすれば、何十足もサプライしているが、実際にこのリターンはどこで取ればいいんだ、となっているのが現状です。
で、多くのメーカーがJ1以外にはもうサプライしないんですよ、と体のいい理由で選手との契約を切っている。
そもそも選手もメーカーからもらうのが当たり前になっていること自体が問題なんですけどね。。。
そこで、僕が思ったのは、メーカーという遠い存在との関係づくりより、自分の目の前にいるファンとの関係づくりをより強固なものにしていったほうが「乗船」や「共犯」意識は生まれやすいのではないかと言うことです。
スパイクなどのアイテムは選手に絶対的に必要な武器です。
それを性能として"進化"させるか、思いを乗船させることで"深化"させるかはその選手に委ねられています。
僕はスパイクを深化させることで、ともに戦う仲間を増やすことを選択しました。
ただ単にスパイク代をファンディングしてもらうのでは意味がない。
そこにある支援という無形の思いを有形にする必要があったのです。
支援者の名前を入れることも可能だし、その子どもの名前を入れることも可能だし、好きな数字でもいい(誕生日とか)。
その思いを乗せて、僕はみんなと一緒にピッチに立ちたいと思ったのです。
そして、その使用したスパイクを価値ある場所に返したかった。それがスポーツプロボノサポーターの最大のメリットだと思っています。
そして、このスポーツプロボノサポーター(SPS)はここからが始まりです。
乗船した仲間と、本来の意味する「スポーツプロボノ」を一緒に取り組みたい。
初めから乗船した状態でスポーツプロボノをできる可能性がある。
それができてば、当初僕がやり切れなかったことを最後まで成し遂げることができる。
これからもSPSと一緒にたくさんのことを仕掛けていき、SPS数をメンバーシップ化して、一緒にスポーツを通した社会貢献をしていきたいと考えています。
このメンバーが増えることで、SPSはコミュニティ化します。
僕だけでなく多くの選手がこの方法を取ることができます。
そこにも仲間ができます。
クラブ間やメーカー間の垣根を超えて、エネルギーを一つにすることがこのSPSの最大の目的です。
これからも、ファンが乗りたくなるような船を作り続けて、やりたくなるような中身を提供し、行きたくなるような壮大な目的地を掲げていきたいと思います!