安彦考真「人生の先輩から20代に向けてのリアルアンサー」8
Jリーグの開催が延期され続け、シーズンの再開が見えない状況だ。
そんな状況下で、選手たちの中でも「今だからできることがあるんじゃないだろうか」という思いから、SNSで積極的に近況を報告したり、動画配信サービスを活用したメッセージ発信をしている選手も増えてきた。
安彦考真選手もその1人。特に最近は、不透明な時代の予兆を感じ、危機感を持っている選手たちから、安彦選手に対して「共同で動画配信をしませんか?」というオファーが絶えないという。
「サッカーを通じて多くの人に夢を与える」ことで社会に貢献していると感じていたJリーガーたちが今、サッカーができない状況の中で真剣に考え始めている。
「自分にはいったい何ができるのか?」「自分はどうすればプレーする以外で社会に貢献することができるのか?」と。
そんな真摯な思いをぶつける相手として、多くの選手が安彦考真選手を選択しているという事実がある。
「なぜ安彦選手のもとには相談者が集まってくるのか?」そんな問いに対する安彦考真選手のリアルアンサー。
安彦考真の「人生の先輩から20代に向けてのリアルアンサー」8
2020年5月9日
Q. 引退後の人生設計について、現役時代の時からすべきこととは?
20代プロアスリート
「サッカーだけをしていればそれでいい」なんとなくそう思っていたけれど、こんな状況になった時、それだけではいけないという思いが芽生えてきました。
けれど、実際にどうアクションをとればいいのか、今まで考えてこなったことを悔やみつつ、今からできることを探る日々です。
今までサッカーに関することでしか悩むことはなかった。でも今、生き方について悩みが生まれています。
A. 悩み多き人生は幸せだ。
新しい自分に出逢えるのだから
安彦考真
今回の質問を聞いた時、ある選手と話していてふと言われたことが頭に浮かんだ。
「アビさんと話してるとどんなこともポジティブに変換してくれるから、深刻な悩みでも思い切って相談しちゃいたくなるんですよね」
自分自身はそんな気はまったくなかったのだが、無意識のうちにそうしていたんだろうと思った。
僕らは何かしらの悩みを抱えている。
それはなぜか。
「悩み」とは行動をしているから生まれるものだ。
逆に行動していない場合の「悩み」はただの「迷い」でしかない。
行動をしなければ、それは立ち止まっているということ。
立ち止まっていてはどちらが正解かなんてわからない。
もっと言えば、どちらが正解かなんてわからないのに立ち止まっていても何も始まらないし、解決しない。
その点、真剣に悩んでいる人というのは、決して立ち止まっていない。
どちらが正解かなんてわからないからこそ、自分の直感を信じて常に動き続けている。その走路に時折出くわす分かれ道で、人は悩む。
動き出す先は未知の世界。そこで出会う現象はほぼ初体験だ。だからそこで人は悩む。
そうしたら解決できるのか。
どうすれば、この壁を超えられるのか。
みんなそこで苦しむの。でもそれは、道との遭遇だから当たり前のことだ。
動いているからこそみんな悩む。でも、その悩みこそが壁を突破する足掛かりであり、次のステージに上がるためのジャンプ台であるのだ。
だから、僕はいつも思っている。
悩み多き人生は幸せだと。その悩みの向こうにあるのは「新しい自分との出会い」なんだと。
そして、僕はよく自分に言い聞かせている。
「迷うな! 悩め!」と。
僕が無意識に相談者からの相談をポジティブに解釈するのは、その人たちが「迷っている」のではなく「悩んでいる」ことがわかるからだと思う。
以前、ある学生が「留学したいんですがどう思いますか?」と聞いてきたことがある。
僕はその時すぐにそう思う。
「これは悩みではなくただの迷いだ」と。
こういう子にはハッキリ伝えてあげる。
「それは行くか行かないかを悩んでいるのではなく、ただ迷っているだけ。だから『この国に行きたい』『こんなことをしたい』『学びたい』『そのために今こんなことをしています』という言葉が出るようになったら、君の相談はもっと具体的な解決策が見えるはずだよ」と。
留学なんてただの手段だ。
留学じゃなくも目的達成に必要なことあるはず。
そうなると、これは、留学というネームの価値になんとなく酔っているだけの迷子だということが分かる。
僕はゼロ円先生というマンツーマン授業を定期的に開催している。
(年内目標は100人で現在33名の生徒がいる)
そこでも良く思うことがある。
みんな悩んでいることをネガティブ捉えているし、それを恥ずかしいこととも思っている。
きっとそこには、こんなことで悩んでいるのは自分だけで、人に話したらバカにされそうとでも考えているのだろう。
それはまったく違う。
ネガティブに捉えるべきなのは「何を食べようかな」「美味しいのはどれかな」といいながら、結局「いつものにしよう」って知ていっる味を選んで食べちゃうような人だ。
一方で、ゼロ円先生で相談される悩みのほとんどは、自分がどうなるかわからない中で、まずはとにかく動いてみた、その先にあることばかりだ。
彼ら彼女たちは、未知だけれど素晴らしいものに出会っている夢の途中の旅人のように、僕には見える。
彼ら彼女たちが目の前にしているのは、人から聞いた二次情報、三次情報なんかじゃなく、不安や恐怖の中、突き進んだ先で手にした自分自身の実体験なんだ。
それはとてもポジティブなことだ。それらを自分だけの経験としてワクワクした気持ちで受け止めないと、もったいないと僕は思う。
誰もが悩み苦しむことはある。
しかし、それは自分が「答え探しの旅」に出た証であることを自覚しないといけない。
僕は自らの足で歩み、真っ暗闇のトンネルを彫り続けて、Jリーガーになった経験があるからこそ、人をポジティブに前を向かすことができるのだと感じた。
人はどうしても悩んでいることばかりに目がいってしまうが、その壁にぶつかる前まで、目的に向かって行動したその勇気をまず讃えてあげることも必要だ。
もしかすると、僕にはそれができるのかも知れない。
今、世界は大きな変化が起こり続けている。しかもその変化の速度は急だ。
僕たちが持っていた常識や経験値や固定観念は、使えないものになりつつある。
そんな激動の時代の入り口だからこそ「常識も固定観念もぶっ壊し続けている」僕のような存在がクローズアップされているのかもしれない。
ゼロ円先生を始め、さまざまな場面でたくさんの悩める若者たちから相談をうけることに加えて、最近は一流企業に勤める20代のビジネスパーソンたちからも数多くの相談を受けることが増えている。
また、シーズン中断している今、同じ立場である現役Jリーガーたちからも「話がしたい」と続々と連絡が入っている。
今までの常識や固定観念の枠の外に身を置き続けた僕だからこそ、彼ら彼女たちの「悩み」を解放するサポートができるのではないか。いや、そうすべきではないか。そう強く感じ始めている。
それぞれが向かうべき目的に対して、その向かい方は多種多様でいい。法定時速もなければ、方法も決まってない。
ある人が「勇気とは事実と向き合うことだ」と言っていた。
正にその通りだと思う。
何が起きるかわからない未来で、出会った現実から目を背けず、その事実に向き合う勇気を与えることが僕にはできるのかも知れない。
ゼロ円先生の時間が終わた時に見せてくれる、彼ら彼女たちの笑顔がいつも忘れられない。
背中を押すというよりも、閉ざされたように感じているその視界を「見える化」してあげることが、僕の経験をより多くの人に活かすことになると思った。
最後に、悩み多き人生は幸せだ。新しい自分に出逢えるんだから。
だから、自分の行動に自身を持って、ワクワクして生きていこう!