予想を覆した日本サッカーが教えてくれた「本当に必要なこと」

2018.7.18

livest!編集部

現役プロサッカー選手は日本代表の躍進をどう見たか?

リアルアンサー

2018年7月3日の質問

大会前の予想を大きく覆す展開が続いた今回のワールドカップ。優勝候補と呼ばれた強豪国が早々に敗退する一方で、苦戦を予想された日本代表が世界中に驚きを与える戦いを見せるなど、世界のサッカーがますますレベルアップいている印象を受けました。

水戸ホーリーホックの安彦考真選手はワールドカップ2018ロシア大会で、特に日本対ベルギー戦が印象深いと感じたそうです。

そこで今回は現役Jリーガーによる日本対ベルギー戦の感想を聞きました。

スポーツとはそれぞれの選手の人生観の表現の場

安彦考真選手のベルギー戦観戦記

激闘のベルギー戦を終えて。
正直ここまで紙一重の戦いをするとは思っていなかった。
ベスト8入りした上で、ポーランド戦の時間稼ぎが「よかった」と言えると考えていたが、それがどうでもいいと思えるくらい「日本人」であることに高揚感を抱き、興奮させてくれる戦いだった。

4年前と今回の違いは「自分たちのため」がファーストチョイスで「国民のため」がセカンドチョイスになっていたことだろう。
見事な戦いでそれぞれのクラブでの経験を正に「日本化」させてピッチで表現してくれた。

前半開始のプレスは「400mリレーの日本代表」を見ているかのような緻密さで連動していた。
意思疎通というバトンを見事に渡し合ってベルギー代表に隙を与えなかった。

試合後に本田選手が「身体の大きな相手に日本人がどうやって戦えばいいのかを見せれたと思う」と語っていた。
開始20分のプレスを90分やるのは不可能だと言うが、本当にそうなのか?
それができるように世界のコンディショニングトレーニング理論は進化している。いつまでも昔のやり方に頼らずアップデートをする必要がある。

ここまで選手が戦ったんだ。
それは間違いなく彼ら個人の経験によるものが大きい。
この結果で日本サッカー協会は早急にテコ入れをするべきだ。

世界の中にいる選手は進化している。
僕がアヤックスで直接見た世界の現状、ドルトムントでみた育成に対する考え方。
本田選手や長友選手を生み出したのは素晴らしい育成機関があったからではなく、彼ら自身が経験を「自分化」して発信を続けたことで、常に自分をアップデートすることができた結果に過ぎない。

戦い方は見えてきたし、世界の壁がどういうことなのかもこの大会の日本の戦いを通して具現化できるようになると思う。
しかし、問題はそれを表現する選手の技術的能力ではなく、人間性そのものにポイントがあると言うことだ。

これから先も、柴崎選手や乾選手のような存在は確実に現れると思う。
しかし、本田選手や長友選手のように、自分の意思を言語化できる人間はそう現れない。
日本サッカー界が彼らを育てたのではなく、世界の中で生きていく中で彼らは客観的に日本サッカーを見て、こうした方がいいし、こうしなければ差が開く一方だと危機感を肌で感じたはずだ。

ベルギー戦での死闘、激闘を日本サッカーとして無駄にしてはいけない。
ただ、それ以上に考えなければいけないのは、サッカーは技術でするものではなく、人間がその技術を活かすために人生観も含めて表現しなければいけないものへと変化しているということだ。
世界を代表するトップアスリートには必ずそこがある。

プロ野球のイチロー選手や大谷翔平選手、フィギアスケートの羽生結弦選手、サッカーではカズさんやヒデさん。
この人たちの共通点は、技術以外のところにある。
スポーツを見ている視点や次世代への想い、そして彼ら自身の人生観が言語化されている。

最高に興奮させてもらった昨日の戦いは、4年前の惨敗から始まっている。
あの惨敗を本田選手や長友選手がしっかり受け入れ、本気で本気で向き合った結果、今がある。

ここから誰が本気になるのか。
それはJリーガーである僕らであり、今子どもの未来に携わっている指導者のみなさんだ。
彼らが本気になった以上の本気の覚悟を現場見せ続ける必要がある。
そして、組織支えているサッカー人たちは、今のままでは何も変わらないことを肝に命じて、自分の仕事に本気ならなければいけない。

この敗戦を絶対無駄にはできない。
今度は我々の番だ!

 

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