日本は「期待の若手」を殺すのか?

2019.10.8

livest!編集長

人生を哲学的に見つめ、日々考えたことや感じたことを書き留める「人生哲学研究家」のブログ。

編集長ブログ
2019年10月8日

「若さ」を長所とする日本型育成システム

海外はどうか知らないけれど、日本では、特にスポーツやエンタテインメントのジャンルではより若いほど注目される傾向がある。

例えばスポーツの日本代表チームに史上最年少クラスの選手が加わると、特にメディアが実際の活躍以上にその選手を取り上げる。これは、やっぱり視聴者が若い選手の動向を欲するからなのだろう。

「アイドル」という肩書きを持つタレントを日米で比較するとその傾向はわかりやすい。

日本では、まだ未熟だけれど一生懸命頑張って成長する過程をファンに応援してもらうのが一般的なアイドル像だが、アメリカのアイドルは歌唱もダンスも既にある程度完成していて、決して中途半端な状態ではメディアに登場しない。(この傾向は韓国も同様かもしれない)

逆に言えば、日本は「若さに寛容」で「若さを魅力の1つと捉えている」とも言える。

この日、若きチェリストがサントリーホール大ホールデビューを果たした。

この日の指揮者の沼尻竜典さんもこの若きチェリストを意識した選曲をしたと話すなど、若きチェリストのデビュー戦という話題がこの日のコンサートのほぼメイン案件になっていた。

そのチェリストは、鳥羽咲音さん。

年齢は14歳。

確かに若い。サントリーホール大ホールで行われるクラシックコンサートのソリストという意味では、歴代でも若い年齢の部類に入るのではないだろうか。

観客はこの若き新星のデビュー戦をあたたかい雰囲気で迎えた。

鳥羽さん自身かなりの緊張もあっただろうけれど、チャイコフスキーの楽曲を見事に演奏してみせた。

演奏後はあたたかい拍手と声援が長く続いた。

サントリーホールの大ホールで行われる有料のクラシックコンサート。

そこでソリストとして登場する演奏家には、最低限のレベルとクオリティ、資質が求められて当然だ。

そこには年齢によるハンデは存在しない。

それでも、どんなスーパーなアーティストにも、この日の鳥羽さんのようにいつか必ずデビュー戦というものが訪れる。

その時、超ベテランのソリストと同等の演奏を期待する観客で埋め尽くされていたら、すごい才能の原石が大きく傷ついてしまう危険性を孕んでしまう。

その点、ソリストが若いということを前面に出したプロモーションを行い、そのことを念頭に訪れる観客、むしろそのデビュー戦を見たくてお金を払うクラシック音楽ファンが多いというのは、日本の音楽界にとってはとても大事なことだ。

この日、素晴らしいデビューを果たした鳥羽音さんが、数年後、世界的なチェリストととして国際的に活躍し、再びサントリーホールに凱旋する姿を期待して。

平日の昼間という時間帯にも関わらず、サントリーホールに集まったクラシック音楽ファンのあたたかさを胸に、鳥羽さんが高く飛翔することを願って。

「日本フィルとっておきアフタヌーンVol.11」

2019年10月8日(火)13:30開演

サントリーホール大ホール

【出演】

指揮:沼尻竜典、チェロ:鳥羽咲音

ナビゲーター:政井マヤ

日本フィルハーモニー交響楽団

【曲目】

プロコフィエフ:バレエ音楽『ロメオとジュリエット』より

チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』