第6回「アイデアや企画の成功には賛同と協力が不可欠」

2025.3.6

伊部塁 「人生再構成」BLUEPRINT代表

2006年、日本女子サッカーに画期的な一大転換が起こった。

 

それまで「Lリーグ」という名称で開催されてきた日本女子サッカーリーグが、2004年、「なでしこリーグ」という名称に変わり、Jリーグに近い形での運営形態に発展。

それまではクラブチームや実業団チームなど、リーグ所属クラブの運営実態がバラバラだったが、将来的にプロ化をめざすことを念頭にルールを統一することで、Jリーグと肩を並べるようなリーグをめざす志を持つクラブが参加するリーグに変わった。

 

そして2006年、リーグに冠スポンサーがつき、リーグをさらに世の中に発信することで日本女子サッカーの認知向上をめざすとともに、ファン拡大のためのプロジェクトがスタートしたのだった。

そんな一大プロジェクトに、幸運なことに立ち上げ準備から関わることになったのは、偶然とご縁が重なったことがきっかけだった。

リーグの発展を礎に、日本の女子サッカーは世界で躍進。2011年にはFIFAワールドカップで世界一になるなど、短期間で驚異的な飛躍を遂げた。

それも国内リーグの整備と確かな運営があってこそ。

それらを陰で支えるリーグのスタッフの方々、各クラブのスタッフの方々の日々の努力を、リーグに関わることで目の当たりにしていたからこそ、なでしこジャパンの活躍はとても感動的だった。

当時はまだ少数だった海外クラブでプレーする女子サッカー選手もどんどん増えて、今では男子サッカーと同様にそれが当たり前のようになったのも、リーグ改革当初の頃を知っているだけに感慨深い。

 

外から「変える」のではなく、内から「変わる」ことが大事

当時は、スポーツ競技の現場に、スポンサーがついたことによるプロモーション活動などの協力を理解してもらうのに苦労したこともあった。

 

選手はただ純粋に良いプレーがしたい、試合に勝ちたいと日々練習を積み重ねている。

そんな中で、リーグの発展のために時間を割いてもらったり、ファンサービスに参加してもらうことに理解を得るのが難しいこともあった。

それでも、「日本女子サッカーが発展し、世界で輝き、次世代の選手たちに良い環境を継承する」という大命題は、誰もが胸に掲げていた。

だからこそ、こちらの要望に対しても、最終的には多くの人から協力を得ることができた。

 

賛同と協力がアイデアや企画を輝かせる最大の燃料

外から人を変えることは難しい。

でも、関わる人たちが「変わる」と決めた途端、物事は良い方に変わっていく。

そんな奇跡をたくさん目の当たりにすることができる得難い経験をさせてもらった時期だった。

アイデアや企画がどれほど素晴らしいものでも、関わる人たちの賛同や協力を得られなければ、それは絵に描いた餅で終わってしまう。

いや、環境を整えないでアイデアや企画をゴリ押ししてしまうことで、むしろ悪影響を残すだけに終わってしまう危険性もある。

 

社会に生きる誰もが、自分の志に基づいて真剣に生きている。

どんなに優れたアイデアや企画があっても、それだけでは社会は変わらない。

 

「多くの人のためになる」「社会の役に立つ」という熱い想いがまず大前提にあり、そしてその想いを徹底する強い意志を持ち、相手の志を尊重しながら真摯に向き合う気持ちを忘れない。

そんな土台の上に、初めて優れたアイデアや企画が生きてくる。

 

日本女子サッカーに関わった時期、改めてそのことを強く感じた。

そんな記憶がまだ色濃く残っている忘れがたい経験だった。