引退後のセカンドキャリアが大切だということは、分かっている。
でも、「今の自分に、何ができるのか?」と思っている現役選手は多いはずだ。
目の前の試合、練習、身体のケア――ただでさえ時間も体力もギリギリの中で、未来のために何を準備すればいいのか。すぐに答えが見つからないのも無理はない。
だからこそ今回は、「これなら現役中でも無理なく始められる」セカンドキャリア準備のヒントを、5つのステップに分けて紹介したい。
1.まずは「自分の棚卸し」から始めよう
セカンドキャリアを考えるうえで、最初にやっておくべきは「自分を知ること」だ。
・自分はどんなことにワクワクするのか
・どんな役割が得意だったか(リーダー?サポート?)
・どんな時にやる気が出るか、逆に落ち込むか
・周囲からどんな評価を受けてきたか
これまでのサッカー人生を、振り返ってみてほしい。
プレースタイル、ポジション、チーム内での役割、試合への向き合い方――すべてに、自分の特性や強みが隠れている。
たとえば、「冷静に全体を見て指示を出すタイプ」なら、将来マネジメント系の仕事が向いているかもしれない。「人の相談に乗るのが好き」なら、指導や育成系のキャリアもありえる。
まずはノートやメモに、思いつくまま書き出してみよう。自分の「武器」は、すでに持っている可能性が高い。
2.「話す力」と「伝える力」を鍛える
引退後、どんな道に進むとしても、絶対に必要になるのが「伝える力」だ。
・指導者になる → 子どもや保護者に言葉で伝える
・メディアで活動 → 自分の経験を発信する
・ビジネス → 相手に価値を伝え、信頼を得る
すべてにおいて、「話す力」「言語化する力」が土台になる。
おすすめなのは、まず身近な人に自分の考えを話してみること。
後輩にアドバイスをしてみる。チームのミーティングで、自分の意見をしっかり言ってみる。それだけでも、力はついていく。
さらに余裕があれば、noteやX(旧Twitter)などでの発信もいい。
「今日はこう感じた」「こんな風に試合に臨んだ」など、短くてもいいから書き続けることが、思考力を鍛えてくれる。
3.「サッカー×○○」を考えてみる
セカンドキャリアを考えるとき、知っているサッカーに関わる仕事の中で見つけようと思っていないだろうか?
サッカーコーチ、サッカースクール経営、解説者など、身近なところだけ見ていては、自分らしいセカンドキャリアを歩むことは難しい。
しかし、サッカーからまったく離れるのももったいない。
「サッカー×別の何か」という掛け合わせによって生まれたビジネスによって、これまでにもセカンドキャリアの成功事例は生まれている。
「自分がこれまで感じてきた課題」や「やってみたいと思っていたこと」を振り返って、組み合わせを考えてみよう。
そこに、自分にしかできない“価値”が眠っている。
4.小さく「副業」や「体験の場」を持ってみる
現役時代から「本格的に起業しろ」とか「ビジネスプランを作れ」ということではなく、大切なのは現役時代の余裕のあるうちに“小さく試してみること”だ。
・オフの日に、知り合いの会社の手伝いをしてみる
・サポートしてくれているスポーツブランドや企業の人に会ってみる
・PodcastやYouTubeで語ってみる
・オンラインセミナーを受けてみる
こうした「やってみる」経験こそが、将来の道筋をつくるヒントになる。
クラブの許可を得た上で、無理のない範囲でちょっとした収入を得る経験をしてみるのもオススメだ。
5.信頼できる「相談相手」を持とう
最後に大切なのが、「一人で抱え込まない」こと。
キャリアの悩みは、頭の中だけで考えても、なかなか答えが出ない。
だからこそ、信頼できる“外の視点”が必要だ。
・すでに引退した先輩
・キャリア支援に詳しい人
・異業種の友人
・家族やパートナー
思っていることを正直に話し、それを聞いてもらうだけでも、頭が少しずつ整理される。
相手によっては、自分にはない視点や、予想外のアドバイスをもらえることもある。
スポーツ選手向けのキャリア相談サービスや、引退後支援サポートもあるだろう。こうしたものを活用するのも、非常に有効だ。
「セカンドキャリアは、“今”がスタート地点」
引退後の人生に備えるというと、「まだ早い」「本当に引退が間近になってから考えればいい」と思う人もいるかもしれない。
でも実際は、“今”から始めることが、未来の安心や自由につながる。
現役時代のうちに、少しでも選択肢を広げておく。小さくてもいいから動いておく。それが、引退後に「選べる人生」を手に入れるカギになる。
ピッチの外にも、自分の価値を生かせる場所はきっとある。
その準備は、「特別な人」だけがするものじゃない。
「やろう」と思ったその日が、スタート地点だ。