勝利をめざすチームの中で、若手に対してベテランがすべき振る舞いとは?
リアルアンサー
6月21日 安彦考真選手への質問
今シーズンから、40歳という年齢でJリーグ・水戸ホーリーホックに新加入した安彦考真選手。現在、安彦選手は年齢が半分くらいの若い選手たちと寮暮らししているという。
勝利をめざすチームの中において、「40歳のオールドルーキー」という存在は、下手をすると若手選手にとっては面倒な存在でしかなくなってしまう。
アラフォー世代のビジネスマンでも、会社の中で自分より年齢の若い上司や同僚がいたり、逆に年上の部下がいるという環境の人も少なくないだろう。
自分の年齢の半分にも満たない若い選手たちに対して、安彦選手が普段から「ベテランとしての存在意義」や「率先してすべきこと」などとくに意識していることを知ることで、30代、40代のビジネスマンにとっても参考になることがあるかもしれない。
ベテランがプライドを捨てて「余白」を残すことで、若手は近寄りやすい存在と認めてくれる
安彦考真選手の回答
テスト生で参加した日からずっと寮暮らしをしています。
高卒と大卒のプロ2年目までは寮生活というルールがあるのですが、40歳のプロ1年目には特に決められたルールはありません…笑
質問にもあった通り、息子同様の年齢の選手たちとの共同生活は非常に有意義です。
それは、今の時代を生きる選手たちの「感覚」を肌で感じることができるからです。
僕がベテランとしてまず初めにしたことは「プライドを捨てる」ことでした。
40歳なのに寮に住む、40歳なのに車もない…そう思ってしまったら、今の僕は存在しません。
「プライドを捨てる」ということは「対等でいる」ということです。
プロ1年目であれば、若手が感じる感覚がどういうものなのかを知りたいと思いました。
年齢で何かの線を引くのではなく、自らが選手と触れ合うことで、対等な関係に持ち込み、いつでも言いたいことを言える環境を自ら作ることを率先して行いました。
すると選手の中には、そのこと自体へのリスペクトも生まれ、僕に興味を持ち、僕の話を素直に聞いてくれることへと繋がりました。
よく選手には「芸人だったらアビさん一番下ですね」って言われるんです(笑)
これを僕は「愛情」だと受け取っています。
これを直接本人に言える関係値こそ、最高の距離感であり、年齢が違うが故の対等の証明だと感じました。
普段はものすごくいじられますが、いざとなった時には、頼りにされます笑(←自分で言うなって選手からツッこまれること120%ですね)
そもそもスポーツクラブにおける「ベテランの存在意義」は、社内の先輩や上司とは違います。
というか、上司も「ベテラン」という認識を持つことで社内の空気が大きく変化すると思います。
ベテランの存在意義は「コミュニケーションにおける潤滑油」です。
もちろん、背中でその姿勢を示すことはとっても重要です。
しかし時代が変わり、全てがオープンになってきた現代では、その人の存在が対象者の中で必要か必要でないかという分け方をされてしまうようになったと感じます。
(必要のないアプリは携帯からなくなるのと同じ感覚を若い子は持っています)
だからこそ、年齢的にも人生経験も上である以上、僕は若い選手と対等でいたいと思っています。
日本人には無意識の中に上下関係への依存があります。なので対等になればなるほど、その上下関係がいい作用として人間関係に効果をもたらせてくれます。
ベテランがコミュニケーションにおける最大権力ではなく、潤滑油やブリッジとして存在することで、本当の目的を見失わせないことにつながります。
僕はこもチャレンジを始めてから、人から「好かれたい」「嫌われたくない」という感情で動くことがなくなりました。
なので、例えば食事に行くにしても「誘いやすい人」でいることが重要です。
僕から誘っても断れる余白を残しておくと人でいること。
同時に、いつでも気軽に誘える存在であること。
そして、基本食事代は割り勘であること。笑
そうしないと、何だかんだ誘いにくくなってしまうものです。
くだらない話から本質的な話まで、何気ない会話に中で伝えられるようにするには、潤滑油的存在であることが求められます。
最後に、僕が最も意識していることに触れて終わりにしたいと思います。
僕がベテランという存在として最も意識していることは「余白」です。
完璧にはなれないので、無理をせず虚勢を張らずありのままを見せることです。
その余白が「対等」であり「安心」であり、最終的には信頼につながると思っています。
ベテランは組織の潤滑油である!
上司のみなさんもそんな感覚になってみてください!