第2回|忘れていた「好き」の中から本当の自分が見つかる
――BLUEPRINT|伊部塁の人生再構成コンサルティングより
何かを始めたい。
でも、何を始めたらいいのか分からない。
副業や転職、独立、あるいはライフワークのような形で、自分らしい働き方や生き方を模索しようとするとき、多くの人がまずこのような壁にぶつかると思います。
多くの場合、その壁の前で立ち尽くしてしまうことでしょう。
そして、ほとんどの場合、その壁を見なかったことにして、また日常のルーティンの中に舞い戻っていってしまいます。
私にも、そんな時期がありました。
「何ができるか」の前に、「何が自分の中にあるか」
私がずっと願っていた大学での学び直しを始めた当初、正直なところ、「この学びの経験を、将来どう活かすか」というビジョンは持っていませんでした。
ただただ、純粋に自分の内側から湧き出る情熱を保ち続けることだけを考え、新たな気づきや発見が続く日々の興奮を感じ続けることだけを考え、哲学や歴史、芸術や心理学を学ぶ環境に身を置いてみたのです。
ところが不思議なことに、それらを学ぶうちに、徐々に自分という人間の“輪郭”が浮かび上がってきたのです。
なぜ、自分はこのような選択を繰り返してきたのか
どんな価値観が、自分の行動を支えていたのか
どのような場面で、心が自然と動いていたのか
こうした気づきは、どこか遠くにある「可能性」を探すのではなく、自分の内側に眠っていた“ワクワク感”に光を当て直すことで生まれていきました。
「好き」や「得意」は、意外と自分では見えづらい
子どもの頃には即答できた「得意なことは?」の質問に、30代になった頃には、大抵の人が不思議と即答できなくなってしまっています。
なぜなら、それが本当に得意だからこそ、自分にとっては“あまりにも当たり前”になってしまっているからです。
なぜか自然と周囲から相談される
気づいたら頼られている
自分では意識していないけれど、感謝された回数が多い
こうした経験の中に、自分の「強み」や「人の役に立てる感覚」が眠っていることがよくあります。
また、「好きなこと」も同じかもしれません。
本屋で、どんな棚に自然と立ち寄ってしまうか
何気ない休日、どんなことに時間を使っているか
誰にも言っていないけれど、心惹かれる分野がある
私たちが無意識に繰り返している「好き」の“選び方”の中に、本当の興味や関心が隠れているのです。
棚卸しは「ゼロから探す」ためではない
BLUEPRINTでは、クライアントの方とともに、半生を振り返りながら“棚卸し”をしていくプロセスを大切にしています。
この棚卸しの目的は、
「新しい才能を発掘する」ことではありません。
効率性や合理性を追求することでもありません。
むしろ、「今の自分の内側にあるもの」を、違う角度から光を当てて見てみること。
知らず知らずのうちに忘れていた「大切な思い」に、意味を与え直すこと。
例えば、若い頃に憧れた仕事や、取り組んでみたかった無謀な挑戦など、今になって「そういえば、若い頃、夢中になっていたな」と思い出す記憶があります。
私自身も、自分の中に忘れていた「好き」や「無謀な夢」の数々を発掘し、それらを大学での“学び直し”によって丁寧に磨き上げた結果、人生の目標や地図を描き直すという、BLUEPRINTという活動の源泉となりました。
あなたの中には、すでに「素材」がある
誰かになろうとしなくていい。
新しいスキルを焦って身につける必要もありません。
あなたの中には、すでに多くの「宝物の原石」があるのです。
子どもの頃に夢中になった遊び
学生時代にすべてを捧げた部活動
過去に手がけた仕事で身につけた知見
学校の勉強とは違う、好きだからこその知識
感情が強く揺れた得難い経験の数々
それらを丁寧にすくい上げ、言葉にしていくことで、これからの「自分らしい選択肢」は自然と見えてくるはずです。
自己内省ワーク|あなた自身に問いかける時間
この文章を読んでくださったあなたへ、自分自身を見つめるための静かな問いを置いておきます。
最近、「あ、これは得意かもしれない」と感じた瞬間はありますか?
これまでの人生で、何度も人から感謝された行為や言葉には、どんな傾向がありますか?
あなたが「つい、やってしまうこと」「深掘りしてしまうこと」は何ですか?
ゆっくりと、思い出す時間を取ってみてください。
その中に、あなたらしい未来の“設計図”のヒントが隠れています。
次回は、第3回:フリーランスの壁、「この先どう展開していくか分からない」問題 をお届けします。
すでに独立している人こそ直面する「次の軸」の見つけ方について綴っていきます。
今日も、静かに考える時間をご一緒できたことに、感謝を込めて。
伊部 塁