第3回|自由だからこそ「この先の展開」が分からなくなってしまう
――BLUEPRINT|伊部塁の人生再構成コンサルティングより
独立して、自分の力で仕事をしている。
人に雇われず、自由に時間を使える。
クライアントもいて、それなりに信頼もある。
それでも、ある時ふと、こんな思いがよぎることがありませんか?
「で、これからどうするんだろう、自分は」
これは、私がフリーランスとして活動していた時、たびたび繰り返していた自問自答のフレーズでもあります。
自由だからこそ、方向性が見えなくなる
会社に所属している時は、組織の方針やチームのミッションといった「外部の軸」がありました。
それが煩わしくもあった反面、ある種の安心材料でもありました。
けれど、独立した途端、すべてが自分の裁量になります。
身軽さと同時に、戸惑いも生まれます。
どの案件を受けて、どの方向に伸ばしていくか
いつまで今の働き方を続けるつもりなのか
今の自分は“本当にやりたいこと”をしているのか
周囲からは「うまくいってるね」と言われても、本人の内側では、こうした問いが静かに積もっていくものです。
“自由のその先”にある問いは、誰も教えてくれない
会社員時代は、いつか独立したいという憧れがあったかもしれません。
でも、いざ独立して数年が経つと、別の種類のモヤモヤが生まれてきます。
それは「どこに向かうべきかのかが分からない」という感覚です。
事業として、どう成長させればいいのか
今後もこのまま続けていいのか
自分の軸をどう確立していけばいいのか
これらは、フリーランスが必ずぶつかる壁なのかもしれません。
私も編集・プロデュース業で独立してからしばらくは、さまざまなプロジェクトに関わりながら、「動いているけれど、定まっていない」状態に長くいました。
“設計”よりも、“再構成”という視点
ビジネスの世界では、「戦略を描く」「事業を設計する」という言葉がよく使われます。
けれど私がフリーランス時代に感じたのは、それよりもむしろ、常に自分を、自分の思考を「再構成(リフレーム)」し続け、新しい視点や方向性を生み出し続ける力のほうが、フリーランスでやり続けるためには必要なのではないかということでした。
というのも、私たちは会社員時代のように、大きな波が来てもびくともしないぶん、細かい進路変更には対応しづらい巨大な船に乗る船員の一人ではなく、荒波の中、目的地に向かって自分でオールを漕ぎ、自分の意思だけで細かく舵を切ったりすることができる小舟に一人で乗っているようなものだからです。
すでに積み上げた経験がある
担ってきた役割や実績がある
自分では意識していないが、他者から見れば価値のある視点や感性がある
これらを一度、別の視点から捉え直し、未来につながる「物語」として組み直す。
そのために必要なのが、「自分の歩みを編集する視点」なのだと思います。
あなたの中には、すでに“軸”の断片がある
私は現在、BLUEPRINTというコンサルティングを通して、フリーランスや個人事業主の方と1対1で対話を重ねています。
驚くほど多くの方が、すでに「自分の軸」になるものを持っているのに、それを見つけていない、言葉にできていないだけなのだと感じます。
たとえば——
ずっと大切にしてきた仕事の姿勢
気づけば繰り返しているテーマや関心
感情が大きく動いたプロジェクトの記憶
これらを丁寧にすくい上げて、つなぎ直していくと、「今後、どこへ向かいたいのか」が自然と見えてくることがあります。
それは決して“新しい何か”ではなく、これまでの人生の中に、すでに存在していたものなのです。
自己内省ワーク|迷ったときに立ち返る3つの視点
この文章を読んでくださったあなたへ、次のような問いを、自分のために投げかけてみてください。
最近、心が動いた仕事や出来事は何でしたか? その理由は?
これまでの活動の中で、誰かに「それ、あなたらしいね」と言われたことは?
自分にとっての“原点”になっている価値観や経験は何ですか?
これらの問いに向き合うことで、“これから”の方向性を見つけるヒントが浮かび上がってくるかもしれません。
次回は、第4回:**スポーツだけが自分じゃない。アスリートのための「セカンドキャリアの描き方」**をお届けします。
競技に人生の多くを注いできた方が、その後をどう生きるかというテーマについて、静かに考えてみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今日もまた、あなたの人生を見つめ直す静かな時間の一助となれたなら、嬉しく思います。
伊部 塁